バティアシュヴィリの半生をたどるような素敵なアルバム

リサ・バティアシュヴィリ「シティ・ライツ」

バティアシュヴィリの最新作を
買ってしまいました。
クラシックとは思えない、
お洒落でハイセンスなアルバムです。

リサ・バティアシュヴィリ
「シティ・ライツ」

01 シティ・メモリーズ
02 ミュンヘン(バッハ)
03 パリ(ルグラン)
04 ベルリン(シーゲル)
05 ヘルシンキ
06 ウィーン(J.シュトラウス1世)
07 ローマ(モリコーネ)
08 ブエノスアイレス(ピアソラ)
09 ニューヨーク(ドヴォルザーク)
10 ロンドン(ケイティ・メルア)
11 ブダペスト
12 トリビシ(カンチェリ)
 リサ・バティアシュヴィリ(vn)
 ティル・ブレナー(tp:4)
 マクシミリアン・ホルヌング
  (vc:7)
 ミロシュ(g:8)
 ケイティ・メルア(vo:10)
 ベルリン放送交響楽団
 ジョージアフィル
 ニコロズ・ラクヴェリ(指揮)

上記の曲目は、それぞれの
タイトルとなっている「地名」と
その曲の作曲家名のみのせました。
つまり、バティアシュヴィリによる
世界各都市の音楽スケッチなのです。
しかし、
単なる企画ものとはちがいます。

幻想的な曲調から始まる
1曲目「シティ・メモリーズ」は、
「ライムライト」「モダンタイムス」
「街の灯」のテーマがつなぎ合わされた
チャップリンへのオマージュ作品と
なっています。
この曲をスタートに、
世界11の都市の「街の灯」を
巡り歩くという
コンセプトなのでしょう。

2曲目「ミュンヘン」は
バッハの「われ汝に呼ばわる、
主イエス・キリストよ BWV.639」
なのですが、クラシックというよりは
映画音楽の一節を聞いているようです。
3曲目「パリ」ではミシェル・ルグラン。
ヴァイオリンの音色が
ことさら上品に響き渡ります。
4曲目「ベルリン」は
シーゲルの「ベルリンのスーツケース」。
5曲目「ヘルシンキ」は
「イヴニング・ソング」、
フィンランド民謡でしょうか。

6曲目「ウイーン」で雰囲気が変わり、
シュトラウスの「狂乱のギャロップ」。
このあたりでようやく
クラシック音楽らしくなります。
それも束の間、7曲目「ローマ」は
映画音楽モリコーネの「愛のテーマ」。
8曲目「ブエノスアイレス」は
もちろんピアソラ
「ブエノスアイレス午前零時」。
9曲目「ニューヨーク」は
ドヴォルザークの「家路」。
10曲目「ロンドン」では
ケイティ・メルア
「ノー・ベター・マジック」。
ケイティ・メルアは
英国のシンガー・ソング・ライターで
この曲のヴォーカルも担当しています。
11曲目「ブダペスト」の「ひばり」は
ルーマニア民謡でしょうか。

そして最後の12曲目は「トビリシ」で、
カンチェリの作曲したメロディを
ラクヴェリが
繋ぎ合わせたもののようです。

DG 公式チャンネルより

さて、バティアシュヴィリの出身は
12曲目の「トビリシ」を首都とする
ジョージア(旧表記:グルジア)。
12曲目を創ったギヤ・カンチェリも
ジョージアの作曲家であり、
10曲目ケイティ・メルアも
ジョージア出身です。

ミュンヘンからブダペストまで、
すべてバティアシュヴィリと
繋がりのある街であるとのこと。
それらを音楽で巡り、
最後に生まれ故郷ジョージアに戻る。
あたかも彼女の半生を
たどっているような内容です。

音楽的な素晴らしさ、
センスの良さ、
演奏技術の高さだけでなく、
彼女の人間性の高さまで
伝わってくるような
アルバムとなっています。
すべての人にお薦めしたい、
2020年最高の
クラシック・アルバムです。

(2020.8.13)

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