クラシックCDこの曲ベスト3 File-020
武満徹・系図
私の手元にある音楽之友社刊
「最新版名曲名盤500」には、
その名の通り500曲もの「名曲」が
掲載されています。
しかし日本人作曲家の曲は
1曲もありません。
自国の文化に関心の低い国であることを
情けなく思います。
世界に名だたる日本人作曲家の
代表格は武満徹でしょう。
そして武満徹の代表作は
「ノヴェンバー・ステップス」ですが、
これは一般的には
聴きやすい音楽とはいえません
(中学校音楽の鑑賞曲として
長年指定されているのですが、
中学生が聴いておもしろいと思うような
曲ではありません。
クラシック音楽嫌いを増やす
要因となっているような気がします)。
では何があるか?
「系図」です。
武満徹・系図
小澤征爾(指揮)
サイトウ・キネン・オーケストラ
遠野凪子(語り)
![](https://i0.wp.com/www.xn--68j2bd00b5dpc7181c2ssb6kvp57b6yf.club/wp-content/uploads/2020/08/2020.08.30-1.jpg?resize=700%2C700&ssl=1)
01 エア
02 系図
03 エクリプス
04 ノベンバー・ステップス
05 弦楽のためのレクイエム
この曲の目玉は
谷川俊太郎の詩の朗読であり、
語り手の印象がそのまま
演奏の印象となってしまいます。
遠野凪子の朗読は癖があるものの、
特異な世界観を創り上げています。
この曲の初録音の盤であり、
私はこれでこの曲を知り、
すり込まれた部分がありますが、
聴き比べても当盤が最高でしょう。
この曲の語りについては
「12歳から15歳の少女が望ましい」と
武満が言い残していますが、
録音当時、遠野凪子は15歳。
年齢条件に合致しているのは
この盤だけなのです。
山田一樹(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
上白石萌歌(語り)
![](https://i0.wp.com/www.xn--68j2bd00b5dpc7181c2ssb6kvp57b6yf.club/wp-content/uploads/2020/08/2020.08.30-2.jpg?resize=700%2C700&ssl=1)
01 オリオンとプレアデス
02 夢の時
03 系図
04 ア・ストリング・
アラウンド・オータム
05 ノスタルジア
06 星・島(スター・アイル)
07 弦楽のためのレクイエム
上白石萌歌の語りが
素晴らしいのですが、
それ以上に若い指揮者・山田一樹の
颯爽とした指揮ぶりも見事です。
何よりも録音が優秀で、
一つ一つの楽器の音が
鮮明に聞こえてきます。
バッティストーニ(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団
のん(語り)
![](https://i0.wp.com/www.xn--68j2bd00b5dpc7181c2ssb6kvp57b6yf.club/wp-content/uploads/2020/08/2020.08.30-3.jpg?resize=700%2C700&ssl=1)
01 チャイコフスキー:
交響曲第6番
ロ短調Op.74「悲愴」
02 武満徹:系図
こちらは当曲の最新録音(2018年)です。
何かと話題のアーティスト
「のん」の語りです。
NHKの朝ドラ「あまちゃん」で
ファンになりましたので、
期待して購入しました。
どう表現していいか分からないのですが
不思議な魅力があります。
癖のない(やや不器用な)、
いかにも彼女らしい語りです。
遠野凪子とは対極にあります。
以上が当曲のベスト3です。
なお、この曲の収録されているCDは、
この3枚のほかにあと2枚あります。
そちらも紹介しておきます。
小澤征爾(指揮)
サイトウ・キネン・オーケストラ
小澤征良(語り)
![](https://i0.wp.com/www.xn--68j2bd00b5dpc7181c2ssb6kvp57b6yf.club/wp-content/uploads/2020/08/2020.08.30-4.jpg?resize=700%2C700&ssl=1)
海外で発売された
当盤の語りは英語です。
日本人リスナー向けではありません。
岩城宏之(指揮)
オーケストラ・アンサンブル金沢
吉行和子(語り)
![](https://i0.wp.com/www.xn--68j2bd00b5dpc7181c2ssb6kvp57b6yf.club/wp-content/uploads/2020/08/2020.08.30-5.jpg?resize=700%2C700&ssl=1)
吉行和子の語りは素晴らしいのですが、
詩のイメージと合いません。
もっとも12歳~15歳で、
谷川俊太郎の詩の世界を理解し、
観衆を目の前にして
詩を情感たっぷりに暗唱する、
しかも音楽とタイミングを合わせて、
となると、それができる語り手を
選ぶのは至難の業でしょう。
当盤は、その年齢条件以外の
すべてを満たしているのですが、
やはり上の3盤にはかないません。
1996年に武満が死去した際、
欧米の新聞が大々的に報じたのに対し、
日本の新聞の多くが
他の経済人と同じ扱いでしか
訃報欄に載せていなかったと
記憶しています。
世界に誇ることのできる日本の文化を、
日本社会が軽視している風潮は
目に余ります。
日本の文化を正しく理解し、
正しく評価し、
正しく味わえる社会でありたいと
思います。
(2020.8.30)