新たな魅力に気づかせてくれた3枚

クラシックCDこの曲ベスト3 File-021

シューマン 子供の情景

シューマン作曲による
ピアノ曲「子供の情景」。
「子供の」とありますが、
お子様用の
ピアノ練習曲などではありません。
「大人が振り返った
子供時代の思い出」を描いた、
立派な「大人のための作品」なのです。

リーズ・ドゥ・ラ・サール盤

実はジャケ買いしてしまったこの盤。
青い瞳の金髪のお姉さんなら、
演奏が下手でも許してあげよう、などと
上から目線で買い込んだのですが、
とんでもありません。
立派な演奏です。
「あれ、この曲は
こんなに素敵な曲だったんだ」と、
新たな魅力に気づいた次第です。

特に第5曲、第6曲での
力強い打鍵は見事です。
細かい技巧については
私はよく分かりませんが、
明快な旋律によって、躍動する
子供の姿が見えてくるようです。
それに続く第7曲「トロイメライ」では、
逆に力をコントロールし、
たゆたうような音像を
創り上げています。
曲に合わせて緩急を使い分け、
情感たっぷりな演奏となっています。

マズマニシヴィリ盤

続いての1枚は
ドゥダナ・マズマニシヴィリ。
名前から予想できるとおり、
ヴァイオリニストのバティアシヴィリや
ピアノのブニアティシヴィリと
同じジョージア出身のピアニストです
(それにしてもジョージアは
美人音楽家が多い!)。
こちらもあまり大きな期待をせずに、
今、最も新しい「子供の情景」の録音を
探して購入したものです。
どうしてどうして、なかなかの技巧です。

何より録音が良好であり、
音の一音一音が明瞭に聴こえます。
そのため、マズマニシヴィリの
華やかな音色が
一層引き立っているのです。
第2曲から第6曲にかけて
特に美しさが際立っています。
もちろん第7曲も
うっとりとさせられます。

シュタイアー盤

最後の1枚は、
フォルテピアノやチェンバロ演奏でよく
名前を聞いていたシュタイアーです。
こちらはピアノ演奏ですが、
第1曲から速いテンポで
颯爽と弾いていきます。
前の2枚とは印象が大きく異なります。

しかし、第3曲、第5曲などは
極めて爽快感あふれる演奏です。
第7曲でさえも快速です。
リーズ・ドゥ・ラ・サールが2分48秒、
マズマニシヴィリが2分26秒で
あるのに比べ、シュタイアーは
1分46秒で弾ききっています。
この快速シューマンは、
好き嫌いが分かれるのではないかと
思われますが、
これも一つの演奏スタイルであり、
私は楽しむことができています。

かつて私はこの曲について、
ホロヴィッツ盤、
アルゲリッチ盤(84年)、
ピリス盤があれば、
あとはいらないだろうと思い込み、
四半世紀にわたって他の演奏家の盤を
無視してきてしまいました。
大いに反省しています。
最近ではこの3枚を
そのときの気分によって聴いています。

リーズ・ドゥ・ラ・サール盤は
2013年録音、
シュタイアー盤2007年、
マズマニシヴィリ盤2016年、
新しく登場する盤には、
それなりの新しい魅力があります。
やはりクラシック音楽は
まだまだ尽きぬ魅力に満ちた世界です。

シューマン:子供の情景 Op.15
第 1曲 見知らぬ国から
第 2曲 珍しいお話
第 3曲 鬼ごっこ
第 4曲 おねだりする子供
第 5曲 みたされた幸福
第 6曲 大変なできごと
第 7曲 トロイメライ
第 8曲 暖炉のそばで
第 9曲 木馬の騎士
第10曲 ほとんどきまじめに
第11曲 こわいぞ
第12曲 眠りに入る子供
第13曲 詩人は語る

(2020.9.5)

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