クラシックCDこの曲ベスト3 File-022
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」
「皇帝」の名にふさわしく、
威風堂々としたピアノ協奏曲です。
有名曲であるが故に、
名だたるピアニストが
いくつもの録音を残しています。
そのため名盤なるものは
数知れず存在する、
まさにピアノ協奏曲の皇帝的存在です。
ネット上にも
この曲の名盤紹介はあまたあり、
私ごときが取り上げるのも
おこがましいとは承知の上、
最近よく聴く3枚を紹介します。
ポリーニ(ピアノ)
アバド指揮ベルリンフィル
![](https://i0.wp.com/www.xn--68j2bd00b5dpc7181c2ssb6kvp57b6yf.club/wp-content/uploads/2020/09/2020.09.22-1.jpg?resize=640%2C480&ssl=1)
この盤を外すわけにはいきません。
ポリーニ・アバド・
ベルリンフィルという、
ピアニスト、指揮者、オーケストラ
それぞれの「皇帝」を揃えた名演です。
90年代を代表する音楽家による
記念碑的名演と考えます。
ポリーニのピアノは煌びやかで
艶のある音色です。
かつ彫りの深い造形美に満ちた打鍵です。
アバドはそれを明快かつ正確な伴奏で
しっかりと支えています。
ベルリンフィルはそれに応え、
精緻なアンサンブルを
創り上げています。
まさに「皇帝」にふさわしい
響きの連続です。
レヴィン(フォルテピアノ)
ガーディナー指揮
オルケストル・レヴォリューショネル・
エ・ロマンティーク
![](https://i0.wp.com/www.xn--68j2bd00b5dpc7181c2ssb6kvp57b6yf.club/wp-content/uploads/2020/09/2020.09.22-2.jpg?resize=640%2C480&ssl=1)
速いテンポで
小気味よく音楽が進行します。
レヴィンのピアノよりも
ガーディナーの音楽作りの成果が
特徴となっている演奏です。
四半世紀以上前のガーディナーの
ベートーヴェン交響曲全集の衝撃が
覚めやらぬうちに登場した
ピアノ協奏曲全集の一枚です。
以来、ずっと聴いてきています。
古楽器演奏はもしかしたら
この曲にはふさわしくないかも
知れません。
しかしガーディナーの速いテンポと
躍動感あふれる音づくりは、
華美な鎧を脱ぎ捨てた、
若くスポーティな新しい「皇帝」像を
提示しています。
ギィ(ピアノ)
P.ジョルダン指揮
フランス放送フィルハーモニー
![](https://i0.wp.com/www.xn--68j2bd00b5dpc7181c2ssb6kvp57b6yf.club/wp-content/uploads/2020/09/2020.09.22-3.jpg?resize=640%2C480&ssl=1)
近年活躍めざましいピアニスト・
フレデリック・ギィによる、
こちらも若々しく瑞々しい「皇帝」です。
ピアノ・ソナタ全集で聴かれた
ギィの明確で力強いタッチは
ここでも効果的に現れています。
録音も鮮明で、
華やかなピアノが響き渡ります。
何度聴いても
聴き飽きることがありません。
素晴らしい演奏です。
比較的新しい録音という
認識がありましたが、
2007年録音ですので、
10年以上が経過していました。
先頃、ギィの弾き振りによる
新全集の録音が発表されています。
そちらはまだ入手していませんが、
この盤に取って代わる可能性は
高いものと期待しています。
取り上げたのは、あくまでも私が
ここ数年好んで聴いている3枚です。
この3枚以外にも
もちろん名盤が目白押しです。
アナログ時代から定評のある
グルダ&シュタイン盤、
レヴァインとラトルによる
2種のブレンデル盤、
レヴィン盤と甲乙つけがたい
フォルテピアノによるインマゼール盤、
ワイセンベルクによる
カラヤンとの東京ライヴ盤、
そして小澤との盤、
ギレリス&セル盤、
バレンボイムの弾き振りのEMI盤、
そして意外な名演マイケル・ロール盤
等々、多士済々の感があります。
今年はベートーヴェン・イヤー。
名演揃いの「皇帝」を、
十分に味わいましょう。
(2020.9.22)