ロール/シェリーのベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集

演奏と録音のどちらも秀逸、希有なCD

先週、ベートーヴェン・
ピアノ協奏曲第5番のCDとして、
ポリーニ盤、レヴィン盤、ギィ盤を
取り上げました。
それに肉薄する、いや、
それを上回る演奏が当盤です。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集

DISC1
・ピアノ協奏曲第1番ハ長調op.15
・ピアノ協奏曲第2番変ロ長調op.19
DISC2
・ピアノ協奏曲第3番ハ短調op.37
・ピアノ協奏曲第4番ト長調op.58
DISC3
・ピアノ協奏曲第5番
  変ホ長調op.73「皇帝」
・ピアノ、ヴァイオリンと
  チェロのための三重協奏曲
   ハ長調op.56
マイケル・ロール(p)
ジャン=ジャック・カントロフ(vn)
ラファエル・ウォルフィッシュ(vc)
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ハワード・シェリー(指揮)

(1995年録音)〔MEMBRAN〕

オークションサイトでの
「これまでのあらゆる全集の中でも
ベストといっても
決して大げさではありません。」という
説明に惹かれ、
だまされたつもりで購入しました。
その文言に嘘はありませんでした。
素晴らしい演奏です。

まず、ロールの弾くピアノの音色が
明るく美しいのです。
煌びやかな音色が響き渡ります。
タッチも自然体でありながらも
明確であり、
少しも奇をてらったところが
ないにもかかわらず、
耳に深く刻み込まれるような音色です。
特に第1番、第5番それぞれの第2楽章は、
うっとりとさせられるほどの
美しさです。

それを支えるシェリーの指揮と
ロイヤルフィルの演奏も
ももちろん素晴らしいできばえです。
ロールに負けずに
丁寧な音作りに徹しています。
そしてロールのピアノが
前面に出るようにサポートしています。
指揮者が前に出るようなことは
ありません。

さらに当盤の特徴は、
その素晴らしい演奏を余すところなく
収録している録音の良さなのです。
とにかく音が素晴らしいのです。
どの曲からも
瑞々しい音が飛び出します。
演奏と録音のどちらも秀逸なCDは
なかなかないのですが、
当盤はそうした希少なものの一つです。

調べてみると、当演奏は発表当時、
イギリスの批評家から
絶賛を浴びていたとのこと。
おそらく演奏家の知名度が高くなく、
発売元のレーベルに
力がなかったために
忘れ去られてしまったものと
考えられます。

加えて、
かつてDocumentsレーベルから
発売されていた当初は
SACD仕様だったようです。
さぞかし音の良さが
際立っていたでしょう。
できればそちらを
入手したかったのですが、
すでに廃盤となっていました。
MEMBRANレーベルから
再発されたのは幸いです。

オークションサイトではまだ新品が
1600円という信じられない安価で
提供されています。
購入して絶対損のない
名盤名演奏名録音です。

(2020.9.27)

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