フリューベック・デ・ブルゴスのベートーヴェン交響曲全集

驚くべき交響曲全集、驚くべきコスト・パフォーマンス

クラシックはオペラ以外、
Blu-rayを買おうと思いません。
なぜならNHK-BSで
面白いコンサートを
ある程度撮りためているからです。
でも今回は買ってしまいました。
ベートーヴェン交響曲全集です。
聴いて驚きました。
超名演です。

ベートーヴェン:交響曲全集
デンマーク国立交響楽団
フリューベック・デ・ブルゴス(指揮)
〔Dacapo〕2012-2014年

Disc1
ベートーヴェン:
 交響曲第1番ハ長調Op.21
 交響曲第2番ニ長調Op.36
 交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」
 交響曲第4番変ロ長調Op.60

巨匠然とした風格を湛え、それでいて
重く引きずることはありません。
やや遅めのテンポでありながら、
ブルゴスの指揮棒は
きびきびと音楽を進行させ、
しっかりとした造形美を
創り上げています。
そしてデンマーク国立交響楽団が
エッジの効いた見事なアンサンブルで
指揮に応えています。
近年の古楽器演奏が好きな私ですが、
この演奏は惚れ惚れとさせられます。

Disc2
ベートーヴェン:
 交響曲第5番ハ短調Op.67「運命」
 交響曲第6番ヘ長調Op.68「田園」
 交響曲第7番イ長調Op.92
 交響曲第8番ヘ長調Op.93

指揮者フリューベック・デ・ブルゴスは
2014年に亡くなっています。
したがってこの演奏は、
死の直前までのコンサートを
収録したものなのです。
にもかかわらず、ブルゴスの指揮棒は
冴え渡っています。
体力の衰えからか
椅子に着座しての指揮ですが、
タクトはオーケストラを
精妙にコントロールし、
音楽は一瞬たりとも
弛緩することがありません。
晩年のカラヤンやバーンスタインの
指揮姿とは全く異なります。

Disc3
ベートーヴェン:
 交響曲第9番ニ短調Op.125「合唱」
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
ベルリオーズ:幻想交響曲
R.シュトラウス:アルプス交響曲
〔第九交響曲ソリスト他〕
シャギムラトーヴァ(ソプラノ)
ヘレカント(メゾ・ソプラノ)
マッカリスター(テノール)
ロイター(バス)
デンマーク国立コンサート合唱団

圧巻は第九交響曲です。
第1楽章第2楽章では、
指揮者からもオーケストラからも
ただならぬ緊張感が伝わってきます。
第3楽章ではそれが
天国的な美しさに転化します。
そして第4楽章。
大きな感動に包まれます。
CDも含め、あまたあるこの曲の演奏の
ベストに位置づけできる
完成度の高さです。

おまけのように併録されている3曲も、
極めて素晴らしい出来映えです。
それについては
また別の機会に取り上げます。

いい買い物をしました。
CDでは録音に恵まれなかった
スペインの老指揮者、
欧州の有名楽団の影に隠れ、
今ひとつ知名度の上がっていない楽団、
メジャーとは言いがたいレーベル、
そうした要素が重なっているため、
実は全く期待してませんでした。

それでも購入した理由は次の3つです。
①今年がベートーヴェン・イヤーで、
 雰囲気につられた。
②値段が超安値、¥2,990。
③パッケージが縦長ケースではなく
 CDサイズであり、
 CDと同じ棚に並べられる。
そんなどうでもいい理由で
つい買ってしまったのですが、
大正解・大満足です。

驚くべき交響曲全集であり、
驚くべきコスト・パフォーマンスです。
数年後には間違いなく名盤として
名を残しているはずです。
クラシックの映像作品は、
CD以上に廃盤が早く、
今後入手困難となる可能性があります。
買えるうちに買っておきましょう。

(2020.11.14)

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