ナタリー・クラインのチェロ

EMIから出ていた幻のような3枚

チェロでは
ナタリー・クラインが好きです。
つややかなチェロの音色、
力強くも重くなりすぎず、
かつ流麗に弾きこなすテクニック、
情感たっぷりに歌い上げる弾き方。
それになんといっても類い希なる美貌。
その割とCDがあまり出ていないのが
なんとも不思議です。
私が所有しているのは
初期の3枚ですが、
とても聴き応えのある盤です。

「エルガー:チェロ協奏曲」
エルガー:
・チェロ協奏曲ホ短調 Op.85
・愛の挨拶 Op.12
・気まぐれ女 Op.17
・ロマンス Op.62
・南国にて Op.50~『月光に』
・朝の歌 Op.15-2
・溜め息 Op.70

 ナタリー・クライン(vc)
 ロイヤル・リヴァプール・フィル
 ヴァーノン・ハンドリー(指揮)

私が最初に買った一枚です。
もちろんジャケ買いでした。
ジャケットからは
妖艶な雰囲気が滲み出ているのですが、
演奏も魅力たっぷりでした。
どうしてもこの曲の場合、
デュプレ/バルビローリ盤と
比較されがちなのですが、
こちらの方が音楽を聴く分には
優れていると感じます
(デュプレ盤は熱くて重く立派すぎて
時に胃もたれする感がある)。
愛の挨拶以降の商品も
チャーミングな演奏です。

「the romantic cello」
・ショパン:チェロ・ソナタOp.65
・ショパン:
  序奏と華麗なるポロネーズOp.3
・ラフマニノフ:チェロ・ソナタOp.19
・ラフマニノフ:
  ヴォカリーズOp.34-14

 ナタリー・クライン(vc)
 チャールズ・オウエン(p)

続いて購入したのがこちらです。
ショパンとラフマニノフの
チェロソナタについては、
他の演奏をほとんど聴いていないので
なんともいえないのですが、
やはり艶やかで
伸びのある音が響き渡り、
魅了されます。
ネット情報を見ると
「クラインのデビュー番」という
紹介があるのですが、
本当のデビュー番は次の一枚です。

ブラームス:チェロ・ソナタ第2番
シューベルト:
 アルペジョーネ・ソナタ
ブラームス:チェロ・ソナタ第1番

 ナタリー・クライン(vc)
 チャールズ・オウエン(p)

ブラームスの2曲は、
朗々とした響きを聴かせ、
好感が持てます。
それでいてやはり重苦しくならず、
若々しいブラームスとなっています。
そしてそれ以上に
シューベルトのなんと美しいこと。
クラインの歌わせ方は
ため息が出るほどの美しさであり、
ブラームスとの対比が見事です。

この盤は、バックインレイの背の部分に
「EMI」のロゴがひっそりあるだけで、
例の赤いロゴマークは
見当たらないのです。
調べてみると当盤は、
EMIの下部レーベル
「classics for pleasure」
(以下CFP)から出されたものでした。
CFPはLP時代の録音を
廉価で発売するレーベルで、
時折無名の新人を
紹介もしていたようです。
つまり、この録音は
クラインの試用期間のようなもの
だったのでしょう。
そこでいきなりこの本格的な
チェロ・ソナタに挑戦し、
見事メジャー・デビューを
果たしたのですからたいしたものです。

残念ながらクラインのEMI録音は
この3枚のみのようです。
その後移籍し、ハイペリオン等の
レーベルから数枚出ているのですが、
マイナーな曲が中心であることと、
ジャケット写真にクラインの美貌が
使用されていないものが多く、
手を出していません(機会を見て
購入するつもりなのですが)。
残念なことです。
いつかベートーヴェンの
チェロ・ソナタ全集や
バッハの無伴奏チェロ組曲を
発表してくれる日を
心待ちにしたいと思います。

(2020.12.29)

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