イリーナ・ムレサヌ「Four Strings Around the World」

ヴァイオリン1本で世界を表現

またまたちょっと珍しいCDを
昨年末入手しています。
世界各国の無伴奏ヴァイオリンのための
作品を集め、
ヴァイオリンで世界旅行を
楽しもうという企画のCDです。
同様の試みは、以前取り上げた
リサ・バティアシュヴィリの
「シティ・ライツ」
にも見られます。
そちらはオーケストラや他の楽器による
サポートがあるのですが、
本盤は独奏ヴァイオリンです。

「Four Strings Around the World」
【東西ヨーロッパの音楽】
・エネスコ:
 ルーマニア民謡の様式によるアリア
・フリン:Tar Eis an Caoineadh
・パガニーニ:カプリース第24番
・クライスラー:
 レチタティーヴォとスケルツォ
・J.S.バッハ:
 無伴奏ヴァイオリンのための
 パルティータ第2番-シャコンヌ
【中東とアジア、南北アメリカの音楽】
・ヴァリ:カリグラフィ第5番
・コルデ:Vak
・シェン:The Stream Flows:II
・ピアソラ:タンゴ・エチュード第3番
・テイト:Oshta
・オコーナー:クリケット・ダンス
イリーナ・ムレサヌ(vn)

さて、
どのように世界旅行なのかというと、
バックインレイを見る限り、
次のようです。

ルーマニア→エネスコ
アイルランド→フリン
イタリア→パガニーニ
オーストリア→クライスラー
ドイツ→バッハ
イラン→ヴァリ
インド→コルデ
中国→シェン
アルゼンチン→ピアソラ
chickasaw nation→テイト
アメリカ→オコーナー
※chickasaw nation は
 アメリカの先住民族ということ
 らしいのですが、浅学の私には
 よくわかりませんでした。

東西ヨーロッパといわれても、
その違いは私には
よく理解できませんでした。
イギリス、イタリア、フランス、
ドイツの有名オーケストラ曲を
示されれば、
その曲想の違いはわかるのですが、
ルーマニアやアイルランドでは…。

また、イランからインド、中国まできて、
日本を素通りして
南米へ上陸しているのも
やや残念といえば残念です。
日本の曲を取り上げていたならば、
どんな曲を
どのように演奏していたのか、
非常に興味のあるところです。

とはいえ、画期的な試みであり、
しかも知らない作曲家に出会うことが
できたのはうれしい限りです。
特にフリン、コルデ、テイトの曲は
世界初録音とのこと。
こうした作曲家に光を当てたのは、
大きな意義のあることです。

ヴァイオリンの
イリーナ・ムレサヌですが、
技巧の程は私にはよくわかりませんが、
艶やかな音色を楽しませてくれます。
ルーマニア出身ということで、
ヨーロッパらしい気品の高さを
感じさせます。
一部の曲はもっと泥臭く
民族色を出してもいいのではないかとも
思うのですが、
聴いていて十分楽しめました。
YouTubeに、
当盤に収録されている
パガニーニの曲がアップされています。

残念ながら本盤は
あまり売れなかったようです。
HMVでも現在
ワゴン・セール品となっています。
また、Amazonでは私は397円という
破格の値段で入手できました。

音楽の森は広大で深奥です。
こうしたCDや演奏者が
もっと注目されることを期待します。

(2021.1.2)

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