ギル・シャハムのヴィエニャフスキ

シャハムのヴァイオリンの魅力

その盤を聴いてはじめて
その曲の良さやその演奏家の良さを
理解できる。
そんな瞬間があります。
この盤がそうでした。
かれこれ四半世紀以上前、
私は何気なく購入したこの一枚で、
ヴィエニャフスキという作曲家の
2曲のヴァイオリン協奏曲の
味わい深さに気づき、
ギル・シャハムという
ヴァイオリニストの魅力を
知ることができました。

ヴィエニャフスキ:
 vn協奏曲第1番嬰ヘ短調Op.14
 vn協奏曲第2番ニ短調Op.22
 伝説曲ト短調Op.17
サラサーテ:
 ツィゴイネルワイゼンOp.20

ギル・シャハム(vn)
ロンドン交響楽団
ローレンス・フォスター(指揮)
録音:1990年

シャハムのヴァイオリンの音色の
なんと美しいこと。そして
高い技巧を要求される曲でありながら、
難なく弾きこなしている爽快さ。
見事としかいいようのない歌い回し。
このときシャハムは
まだ20歳前後だったはずです。
才能の輝きを感じました。

ヴィエニャフスキといわれても、
クラシック音楽を聞き慣れた方でないと
ピンとこないのではないかと
思われます。
ポーランドのヴァイオリニスト、
作曲家であり、
主にヴァイオリンの曲を創作しました。
ヴァイオリン協奏曲を
2曲書いているのですが、
第2番は比較的有名ですが、
第1番はかなりマイナーな存在です。

ヴィエニャフスキの
2曲のヴァイオリン協奏曲については、
かつてNAXOSから出されていた
ビゼンガリエフ盤を
所有していましたが、
録音が今ひとつである上、
第2番はともかく
第1番がぱっとしない演奏で、
曲の良さを実感できないでいたのです。
当盤に出会い、
第1番も第2番に劣らず魅力ある曲だと
ようやく理解できた次第です。

そもそも2曲を1枚に収めた盤が、
当盤以外はそのビゼンガリエフ盤、
そしてパールマン/小澤盤
(こちらも素晴らしい)以外、
ほとんど見かけません。
有名ヴァイオリニストのほとんどが
手がけていないのです。
そういう意味でも当盤は貴重です。

併録されている
同じヴィエニャフスキの伝説曲Op.17、
そしてサラサーテの
ツィゴイネルワイゼンも
素晴らしい出来映えです。
特にツィゴイネルワイゼンについては、
当盤は1,2位を争う演奏ではないかと
考えます。

私はここからギル・シャハムの
ヴァイオリンの魅力にはまり、
協奏曲録音については
ほぼすべてのCDを
購入してしまいました。
まもなく発売される
ベートーヴェンとブラームスの
ヴァイオリン協奏曲集が楽しみです。

(2021.2.14)

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