パーシケッティのハープシコードソナタ

古楽器から紡ぎ出されるゲンダイ音楽

なんだこれは!?
なんとなく買ってしまったCDですが、
なんとも不思議な音楽です。
演奏されているのは
ハープシコードによる独奏です。
ハープシコードとは
ベートーヴェンの時代まで使われた
鍵盤楽器で、
現代のピアノの原型です。通常、
ハープシコードが使用されていた時代の
バッハの時代以前の
演奏に用いられます。
しかしこのパーシケッティは
現代の作曲家であり、
しかもアメリカ人。
最もハープシコードと
無縁でありながらも、そのソナタを
つくってしまったのでした。

パーシケッティ
「ハープシコード・ソナタ集」

ソナタ第1番 Op.52(1951)
ソナタ第3番 Op.149(1983)
ソナタ第5番 Op.152(1984)
ソナタ第8番 Op.158(1987)
ソナタ第9番 Op.163(1987)
セレナード第15番 Op.161(1987)
クリストファー・D・ルイス
録音:2016年

古楽器から紡ぎ出されるゲンダイ音楽。
言葉の上では
ちぐはぐな印象を拭えませんが、
決してそうではありませんでした。
こうして聴いてみると、
ハープシコードの
「強弱を表現しにくい」という欠点が、
まるで電子楽器のように
現代音楽の旋律にフィットし、
現代音楽の響き合わないメロディと、
逆に絶妙な調和を示していることに
気付かされます。
二度三度と聴き通すと、
これはこういう音楽なのだと
十分受け入れることができます。

むしろ、
この楽器でバッハの音楽を
聴くことの方が
不合理に感じてくるほどです。
ハープシコードという楽器は、
ゲンダイ音楽のためにあるのでは
ないかとさえ思えるほどです。

音楽そのものも素敵です。
決して理解不能な音楽ではありません。
親しみやすい旋律が
ところどころに現れます。

これまでこの作曲科の音楽は
聴いたこともなければ
CDを所有してもいませんでした。
このパーシケッティ、
なんと交響曲も作曲していて、
第9番までつくっていました。
また吹奏楽曲の作品も
数多く作曲しています。

NAXOSレーベルの
アメリカン・クラシックシリーズの
一枚です。
知られていない作曲家や作品を
積極的に取り上げるNAXOSの姿勢は
大いに評価できます。
だからこそ、このレーベルのCDを、
なるべく多く購入するよう
心がけています。
こうしたマイナーな音楽が、
地方にいても入手できる。
素晴らしい時代になったものだと
感じています。

(2021.3.15)

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