「方舟/祈禱天頌」

心が揺さぶられます

私は日本の合唱曲が大好きです。
合唱曲というのは中学生や高校生が
歌うものだと認識されがちですが、
私はクラシック音楽の
一つのジャンルと捉えています。
中でも一番好きな曲が
木下牧子の「方舟」。
その「方舟」目当てで買った一枚ですが、
併録されている鈴木憲夫作曲の作品も
それ以上の素晴らしい曲でした。

「方舟/祈禱天頌」
大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団
指揮:当間修一
ピアノ:沖田明子・木下亜子・木下太陽

鈴木憲夫
 雨ニモマケズ 
 祈祷天頌
  Ⅰ アレ ヒキミ
  Ⅱ ウム ウマヨ
  Ⅲ マツリ マツル
 姉ねお鶴(抒情小曲集より)
木下牧子
 方舟
  Ⅰ 水底吹笛
  Ⅱ 木馬
  Ⅲ 夏のおもひに
  Ⅳ 方舟
 春に(「地平線のかなたへ」より)

1曲目の「雨ニモマケズ」は
もちろん宮沢賢治の詩に
曲を付けたものです。
曲が詞とともにぐいぐいと
心に突き刺さってくるような
印象を受けます。

2曲目「祈禱天頌」は、
古代の呪術のような詞に
叙情的な曲が付されています。
限りある生命を慈しむ
祈りのような曲であり、
こちらも心が揺さぶられます。

大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団の
演奏は曲の持つ世界観を
見事に表現していると考えられます。
詞と曲に込められた
人間世界の原初の祈りを、
心を込めて歌い上げています。
かといって決して熱狂的な
自己陶酔にはなっていません。
正確な音程で
丁寧に仕上げられています。
だからこそ、聴き手の心を捉えて
放さないのだと考えます。

お目当ての木下牧子の「方舟」も
素晴らしい演奏です。
ただし、こちらはその端正な演奏が、
どうしても
今ひとつに感じてしまいます。
私の場合、高校生の合唱で刷り込まれ、
自らも学級合唱で2度取り上げ、
演奏した関係で、
素人の歌う「熱い」演奏の方が
この曲のイメージに合致しているように
思えてならないのです。
この曲こそ自己陶酔に浸って歌うべき
曲なのではないかと思うのです。

この素晴らしいCDも
入手できない状態が続いています。
自主製作盤と思われますので、
完売したら最後、
入手不可となるはずです。
買ってて良かった、
持ってて良かったと思える
貴重なCDです。

(2021.3.21)

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