待ちに待ったシャハムのベートーヴェン

ギル・シャハムのベートーヴェン&ブラームス

待ちに待ったシャハムの
ベートーヴェン
ヴァイオリン協奏曲です。
これまでロマンス2曲と
トリプル・コンチェルトの
録音はありましたが、
ヴァイオリン協奏曲も
ヴァイオリン・ソナタも
ありませんでした。
いつ録音するのだろうと
ここ十年くらい待っていたのですが、
ようやく登場しました。

ベートーヴェン:
 ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61
ブラームス:
 ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77

ギル・シャハム(vn)
ザ・ナイツ(演奏)
エリック・ジェイコブセン(指揮)
録音:2019年

予想通り、
いや予想以上の素晴らしさです。
何よりも音が美しいのです。
コパチンスカヤのように
奇抜なことをしていないのに、
曲のところどころで
はっとさせられます。
ヴァイオリンの音が光り輝き、
聴く者の耳を引きつけて
放さないのです。

聴き始めると、そのテンポの速さに
驚くかもしれません。
往年の巨匠たちのどっしりとした
ヴァイオリンを聴き慣れた方であれば
「こんなのベートーヴェンじゃない!」
と言って怒り出すかもしれません。
しかしこの軽快な進行に慣れてくれば
なんともいえない心地よさに
浸ることができるのです。
決して「薄っぺら」などではありません。
密度の濃い音の塊が次から次へと
飛び出してくるような感じがします。

詳しいことはよくわかりませんが、
カデンツァは第1楽章がクライスラー、
第2楽章はクライスラー/シャハム編
(ここにはティンパニとの掛け合いが
組み込まれている)、
第3楽章はクライスラーによる
演奏だそうです。
そして第3楽章ではもう1箇所
シャハム自作のカデンツァが挿入され、
ここが一つの
聴きどころともなっています。

ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、
アバド/ベルリン・フィルとの
録音があるのですが、その旧盤と比べ、
円熟味を増した感があります。
音がより一層柔らかくなり、
旋律の美しさと
ヴァイオリンの音の美しさの両方が
強調されています。
こちらも素晴らしい仕上がりです。

ベートーヴェンブラームス
ヴァイオリン協奏曲の
カップリングというと、
重厚な演奏が繰り広げられている
感覚があるのですが、
肩の力を抜いて、思い切り
音楽を愉しんでいるような演奏です。

ジャケットも素敵です。
ベートーヴェンとブラームスが
お花見でもしているのでしょうか、
そこでシャハムが
ヴァイオリンを弾いて
ジェイコブセンが
指揮棒を振っています。
調べてみると、
ジャケットのイラストは、
演奏団体である「ザ・ナイツ」の
フルート奏者のアレックス・ソップ氏に
よる書き下ろしなのだとか。
素晴らしすぎます。

普段クラシック音楽に
なじみのない方でも、
このシャハム盤から聴き始めれば、
きっとクラシック音楽が
好きになれるのではないかと
思えるような演奏です。
ぜひ、いかがでしょうか。

※ベートーヴェンの第3楽章が
 YouTubeで公開されています。

(2021.5.30)

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