アリス=紗良・オット「Echoes Of Life」を聴く

メインは7つの現代曲、ショパン前奏曲がそれらを繋ぐ

待ちました。
届きました。
聴きました。
アリス=紗良・オットの新盤です。
聴いてみるまでは
ショパンの「24の前奏曲」に
いくつかの現代曲を挟んだものという
イメージしか持っていませんでした。
違います。
メインは現代曲の方で、
ショパンの前奏曲は
それらの世界を補足し、
繋げるものなのです。

アリス=紗良・オット「Echoes Of Life」

「IN THE BEGINNING WAS」
01 トリスターノ:
 イン・ザ・ビギニング・ワズ
ショパン:24の前奏曲Op.28
02 第1番ハ長調
03 第2番イ短調
04 第3番ト長調
05 第4番ホ短調

「INFANT REBELLION」
06 リゲティ:
 ムジカ・リチェルカータ~第1曲
ショパン:24の前奏曲Op.28
07 第5番ニ長調
08 第6番ロ短調
09 第7番イ長調
10 第8番嬰ヘ短調
11 第9番ホ長調

「WHEN THE GRASS WAS GREENER」
12 ニーノ・ロータ:ワルツ

ショパン:24の前奏曲Op.28
13 第10番嬰ハ短調
14 第11番ロ長調
15 第12番嬰ト短調
16 第13番嬰へ長調
17 第14番変ホ短調
18 第15番変ニ長調『雨だれ』

「NO ROADMAP TO ADULTHOOD」
19 チリー・ゴンザレス:
 前奏曲 嬰ハ長調

ショパン:24の前奏曲Op.28
20 第16番変ロ短調
21 第17番変イ長調
22 第18番ヘ短調

「IDENTITY」
23 武満徹:
 リタニ マイケル・ヴァイナーの
  追憶に~第1曲

ショパン:24の前奏曲Op.28
24 第19番変ホ長調
25 第20番ハ短調

「A PATH TO WHERE」
26 ペルト:アリーナのために

ショパン:24の前奏曲Op.28
27 第21番変ロ長調
28 第22番ト短調
29 第23番ヘ長調
30 第24番ニ短調

「LULABY TO ETERNITY」
31 アリス=紗良・オット:
 ララバイ・トゥ・エターニティ

アリス=紗良・オット(p)
録音:2021年

現代曲+ショパン前奏曲数曲の
組み合わせごとに、
「IN THE BEGINNING WAS」
「INFANT REBELLION」
「WHEN THE GRASS WAS GREENER」
「NO ROADMAP TO ADULTHOOD」
「IDENTITY」
「A PATH TO WHERE」
のタイトルが付せられ、さらに
「LULABY TO ETERNITY」の
表題で自作の一曲が綴られる構成です。

しかもこれまで活動を共にしている
ピアニストの
フランチェスコ・トリスターノの
作品から始まり
自作に帰結する流れには、
何か意味深いものを感じてしまいます。

ジャケットと一体化している
ブックレットの中盤から、
見開き1頁ずつ7つの世界を表したと
思われる写真が掲載されています。
ジャケットも含めて、
一つのコンセプトで貫かれている
魅力的なアルバムとなっています。

私はいつも輸入盤を購入するのですが、
私のつたない語学力では
ブックレットに何が書かれている内容を
十分に理解できないところが
もどかしいところです。
日本盤に本アルバムの
コンセプトについて詳しい解説が
なされているのであれば、
そちらを購入すべきだったのかも
しれません。

さて、アリスの演奏ですが、
流麗な中にも
ところどころに力強さの漲る
清冽なスタイルです。
2年ほど前、多発性硬化症と
診断されていたことが公表され、さらに
2018年発表の「NIGHT FALL」以降
新盤が途絶えていましたので、
非常に心配していました。
本盤を聴く限り、
その影響は感じられません。

前作「NIGHT FALL」、
そして本作「Echoes Of Life」を
聴く限り、
ユジャ・ワンに見られるような
刺激的な演奏とは
また異なるスタイルを
模索しているように感じられます。
10年ちかく前に、
裸足で演奏する姿を見たとき
(確かN響との共演でグリーグの
ピアノ協奏曲だった)には
驚かされましたが、
さらなる進化と考えるべきでしょう。

これからじっくりと
聴き込んでいきたいと思います。

(2021.8.8)

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