ポンティのチャイコフスキー・ピアノ協奏曲全集

不思議な響きの第1番、そして魅力ある全集

チャイコフスキーのピアノ協奏曲は、
第1番だけが有名で、第2番は
あまり演奏される機会がありません。
さらには未完成単一楽章の第3番、
2楽章からなる
ピアノ協奏曲といってもいいくらいの
協奏的幻想曲など、
まだまだ聴かれるべき曲があるのです。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲は、
ぜひ「全集」を聴くべきです。
本盤は、私の「推し」の一組です。

マイケル・ポンティ
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲全集

チャイコフスキー:
 ピアノ協奏曲第1番変ロ短調op.23
 ピアノ協奏曲第2番ト長調op.44
 協奏的幻想曲ト長調op.56

マイケル・ポンティ(p)
リチャード・カップ(指揮)
プラハ交響楽団

チャイコフスキー:
 ピアノ協奏曲第3番
  変ホ長調op.75/79

マイケル・ポンティ(p)
ルイ・ド・フロマン(指揮)
ルクセンブルク放送管弦楽団

さて、この盤の特徴は、
それらの曲がすべて収録されている
「全集」であることにとどまりません。
極めて魅力ある盤であり、
私にとっては
愛聴盤の一つとなっています。

この盤の魅力①
マイケル・ポンティの流暢なピアノ

大手のレーベルに
録音を残していないせいか、あまり
知られていないピアニストですが、
ポンティの実力は
折り紙付きといえるでしょう。
ロマン派の作曲家のピアノ協奏曲を
網羅するようなレパートリーを持ち、
それらの録音が
アメリカのVOXレーベルから
発売されています(現在入手が
難しくなっているのですが)。
流れるようなポンティのピアノが、
ともすれば
重くなったり暗くなったりする
チャイコフスキーの音楽から、
明るくチャーミングな魅力を
引き出しています。

この盤の魅力②
不思議な響きの第1番

そして聴きどころはやはり第1番。
あまたある第1番の録音の中でも
不思議な光彩を放っています。
第2楽章第3楽章において
特に顕著なのですが、
オケの管楽器の音が前面に進出し、
なんともいえない音響世界を
創り上げているのです。
転がるようなピアノの音に
触発されたかのように、
木管金管群がそれぞれ勝手に
ソロ演奏をしているように聞こえます。
まるでおもちゃ箱を
ひっくり返したかのような
賑やかさです。

これは、
プロデューサーが意図的に
このような音作りを目指したか、
または、
ミキシングに失敗し、
たまたまこのようなものが
できあがってしまったか、
あるいは、
オケのプラハ響が下手くそで
そのように聞こえてしまうのか、
はたまた全く別の理由なのか、
私にはわかりませんが、
愉しく聞けることこの上なしです。

この盤の魅力③
タネーエフによる完成版第3番

チャイコフスキーの
ピアノ協奏曲第3番は、第1楽章しか
完成させることができずに終わった
遺作となっています。
ところがチャイコフスキーの死後、
弟子のセルゲイ・タネーエフが
この曲の緩徐楽章と終楽章の
スケッチを補筆・編集し、
「アンダンテとフィナーレ」として
発表しました(その際に付された
作品番号が「作品79」)。
それらを第2楽章第3楽章として
演奏されたため、本盤の第3番は
「作品75/79」となっているのです。
こうした形での演奏は、
私の所有しているレオンスカヤ盤、
ギレリス盤、ドノホー盤には
見られません。
素敵な音楽となっています。

このVOXBOXレーベル、
他のレーベルとは異なったセンスの
ジャケットで有名ですが、
その録音もまた個性的です。
現在ほぼ廃盤となっている
VOXBOXのCDを、中古を探して
丹念に集めている最中です。
やはり、音盤は愉し、です。

(2022.7.3)

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