ララ・セント・ジョンの刺激的なバッハ無伴奏

これは「役場のオジサンの文句」などではありません

バッハというと、
どこか堅苦しいイメージがあります。
元ニュースキャスターで
部類の音楽愛好家の俵孝太郎氏は
著書の中でバッハの音楽を
「はっきりいわせてもらえば
役場のオジサンの文句を聴くような
印象がつきまとう」
と述べていました。
私も実はその言葉に
賛同している一人です。
でも、この一枚は違います。
若さ滴るバッハです。

Bach:Works for Violin Solo
Lara St. John

J.S.バッハ:
 無伴奏ヴァイオリンのための
  ソナタとパルティータから
   パルティータ
    第2番ニ短調BWV1004
   ソナタ
    第3番ハ長調BWV1005

ララ・セント・ジョン(vn)
録音:1996年

なんとも自由奔放なバッハです。
デビュー盤からバッハ無伴奏、
それも伝統に縛られず
(というよりも無視して)、
自分の思うとおりに振る舞いきった
演奏といえるでしょう。
緩急の落差が激しく、
感情をむき出しにしたかのような
演奏です。

パルティータ第2番から
尋常ではありません。
流れるように弾きながら、
ときにうねり、テンポを動かし、
まるで巨大な竜が
天空を駆け回っているような
印象を受けます。
なんともスリリングな演奏なのです。
そしてシャコンヌで一気に
天頂へと飛翔していきます。
ソナタ第3番も同様です。
アグレッシヴに攻め込んでいくような
ヴァイオリンが展開します。
これは「役場のオジサンの文句」などでは
あり得ません。
極めて刺激的な音楽体験を
愉しむことのできる一枚なのです。

1996年の録音でありながら、
入手して聴いたのは5年ほど前です。
実はこんなに素晴らしい演奏だとは
つゆほども思っていなかったからです。
なぜならこのジャケット写真。
なんとも目を引くジャケットです。
決してきらいではありません
(むしろ大好きです)。
そしてこの後に発表した
アルバム〔re:Bach〕が、
もはやクラシックの枠を超えて
ロックなのかポップなのか
民族音楽なのかわからないような
状態でしたので、
本盤もいわゆる「色物」だとばかり
思っていたのです。

今日のオススメ!

とんでもありませんでした。
ララ・セント・ジョンは
基本的には立派に「技巧派」です。
そのヴァイオリン・テクニックは
凄まじいものがあります。
しかしながら日本ではほとんど
無視され続けてきたように思われます。

おそらく「色物的アプローチ」の
販売戦略が裏目に出たことと、
同時期にヒラリー・ハーンが
大手SONYミュージックからデビュー
(しかも同じバッハの
パルティータ3,2とソナタ3で、
見事にかぶっている)したために、
マイナーレーベルから出された本盤は
太刀打ちできなかったことが
理由でしょう。

今日のオススメ!

今一生懸命、
ララのCDを探しているところです。
これまで〔re:Bach〕と、
バッハの協奏曲集を入手できましたが、
廃盤となっているCDが
ほとんどであり、
なかなか巡り会えない状態です。

アンテナを高くして、
出始めたときに素早くその真価を
正確に測ることができないと
いけないのがクラシックCD蒐集の
難しいところであり、
また面白いところです。
気長に探したいと思います。
まずはこれまで手に入れた3枚を
じっくりと堪能したいと思います。
やはり、音盤は愉し、です。

※ララ・セント・ジョンはYouTubeで
 自身のチャンネルを開設しています。
 実に楽しそうに演奏しています。

※残念なことに、
 25年前のジャケットの面影は
 ありませんでした。

(2022.7.17)

【ララ・セント・ジョンのCD】

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