シュメルツァーのヴァイオリン・ソナタ集

まだまだ素晴らしい音楽の沃野が広がっている

先日、リナ・トゥール・ポネの
「美~17世紀のヴァイオリン作品集」を
取り上げましたが、
その盤に収録されていた
シュメルツァーの
ヴァイオリン・ソナタが気に入り、
シュメルツァー作品だけで編まれた
CDを探して当盤に行き着きました。
やはり素敵な音楽の世界が
広がっていきます。

シュメルツァー:ヴァイオリン・ソナタ集

シュメルツァー:
 Sonatae unarum fidium Sonata
  Sonata I
  Sonata II
  Baletto di Ninfe
  Sonata III
  Baletto di Trittone
  Sonata IV
  Ciaccona in A major
  Sonata V
  Sonata VI

グナール・レツボール(vn)
アルス・アンティクヮ・アウストリア
録音:2020年

ヨハン・ハインリヒ・シュメルツァー
(1623-1680)は、バロック期の
オーストリアの作曲家であり、
ヴァイオリニストでした。
ヴァイオリンの作曲と演奏については
当時、イタリアがその中心地でした。
ウィーン宮廷での楽長もイタリア人を
わざわざ招聘していたのですが、
このシュメルツァーが実は
オーストリア人初の
ウィーン宮廷楽長となった
人物なのです。
つまり当時のオーストリアにあって、
最も高い評価を得た作曲家であり
ヴァイオリニストということなのです。
本盤の輸入元による解説の一節には、
「ヴァイオリン演奏においては
新しいタイプの弓の奏法を発明し、
指板を押さえる左手は
当時最も高い位置にまで
上っていきました」とあります。
具体的にどういうことなのか、
素人の私にはわかりませんが、
かなり革新的な作曲家であり
演奏家だったようです。

収録されているのは1664年作の
「一つの弦楽器のためのソナタ集」
(Sonata unarum fidium)ですが、
そこに3つの小品が挿入されています。
それらとソナタ集の間に
どのような関係があるのか、
解説書の英文を読めないため、
私には理解できませんが、
9曲が一つの作品のように
聴き取れます。

演奏しているグナール・レツボールは、
アーノンクール以降、古楽界において
オーストリアが生み出した
最高の逸材と言われる
バロック・ヴァイオリニストであり、
その技巧には定評があります。
ヴァイオリンと通奏低音という
単純な構成の曲で、
しかもトータルで70分強の
このプログラムを、
実に陰影深く彫り分け、
曲が本来持っている多彩で豊かな表情を
見事に表現しています。
決して聴き飽きることがありません。
むしろ聴くたびに
味わい深く感じる出来映えです。

古楽演奏を集めたCD-BOX
「vivarte 60CD collection」
第1集第2集の120枚を
堪能していますが、そこに
収録された作曲家や作品以外にも
まだまだこんなに素晴らしい
音楽の沃野が広がっているのですから
驚きです。
古学の世界は想像以上に
深くて広いということを
思い知りました。
やはり、音盤は愉し、です。

(2022.7.31)

今日のオススメ!

【レツボールのCD】

【シュメルツァーのCD】

【関連記事:リナ・トゥール・ポネ】

【今日のさらにお薦め3作品】

【こんなCDはいかがですか】

コメントを残す