音楽に遺された、杉原千畝の功績

Notus Incuras-in Honor Of Chiune Sugihara

棚を整理していると、
しばらくご無沙汰にしていたCDたちと
再会を果たすことが数多くあります。
本盤もそうした一枚です。
十数年前に購入し、
よく聴いていたのですが、
いつしか棚の奥に
追いやられていました。
いけない、いけない。
これは決して粗略にしては
いけない盤でした。

Notus Incuras-in Honor Of
 Chiune Sugihara
早稲田大学グリークラブ

「Notus Incuras-in Honor Of
  Chiune Sugihara」
マデトーヤ:
 詩篇第130番
  De profundis
  Suvi=illan tuuli
シベリウス:
 カレワラ~Venemaika
トルミス:
 MUISTSE MERE LAULUD
 INCANTATIO MARIS AESTUOSI
エルネサクス:
 PAIKE VAJUS PARNAPUULE
メルンガイリス:
 JURNIEKU DZIESMA
Janis Cirulis:
 アヴェ・マリア
ヨナス・タムリオーニス:
 Natus in curas
J.Tallai-Kelpsa:
 CIUTO

早稲田大学グリークラブ
松原千振(指揮)
録音:2002年

杉原千畝を知っていますか。
第二次世界大戦中、ドイツの迫害により
ポーランドなど欧州各地から
逃れてきた難民たちの窮状に同情、
1940年7月から8月にかけて、
外務省からの訓令に反して
大量のビザ(通過査証)を発給し、
6000人ともいわれる難民を
救ったことで知られる外交官
(当時リトアニア・
カウナス領事館副領事)です。
本盤は、その杉原千畝の功績を讃える
コンサートを収録したものです。

そのプログラムは、
リトアニアの作曲家
ヨーナス・タムリオーニスが
杉原を顕彰して書いた
「Natus in curas」をはじめ、
フィンランド・バルト三国の作曲家の
合唱曲で組まれています。
すべて無伴奏の男声合唱であり、
素朴で力強い音楽が
展開されていきます。
合唱好きなら見逃せません。

演奏している
早稲田大学グリークラブは、
創立95周年にあたる2002年、
フィンランド・バルト三国への
演奏旅行を行っています。
中でもリトアニアでは、
本盤と同様のプログラムで、
杉原千畝の功績をたたえるコンサートを
実現させているのです
(なんと杉原は同大学卒)。

杉原千畝の功績が
いかに大きなものであったかは、
日本人初で唯一の「ヤド・バシェム賞」
(「諸国民の中の正義の人」として
顕彰される、名誉ある賞)を
イスラエル政府から贈られている
(1985年)ことからも分かります。

人道上の大きな功績を
残したにもかかわらず、
日本政府は彼を追放、
「訓令に背いた公務員」として
極めて冷淡な対応を戦後長きにわたって
とり続けてきたのです。
彼の名誉が公式に回復されるのは、
2000年に入ってからのことです。

イスラエル政府からの
度重なる要請がなければ、
今でも彼の名前と功績は
知られることがないままだったのかも
知れません。何はともあれ、
このように音楽としても
彼の足跡が残されるのであれば
それは素晴らしいことです。
折に触れて聴いていきたいと思います。
やはり、音盤は愉し、です。

(2022.8.7)

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