グルックの「ドン・ジュアン」「セミラーミス」

まさに「オペラ改革」前夜、オペラティックな二作品

「vivarte 60CD collection」によって、
今まで疎遠だった作曲家と、
いい出会いを果たしています。
今日取り上げるグルック
その一人です。
積極的に盤を買い求める
対象ではありませんでした。
たまたま買ったCDに、
埋め草のように収められている
「精霊の踊り」と、オペラ
「オルフェオとエウリディーチェ」を
聴いただけでした。

BOXⅡ Disc18
グルック:バレエ・パントマイム

グルック:
 バレエ・パントマイム
  「ドン・ジュアン」
  「セミラーミス」

ターフェルムジーク・バロック管
ブルーノ・ヴァイル(指揮)
録音:1992年

クリストフ・ヴィリバルト・グルックは、
1714年、ドイツに生まれた作曲家です。
現在CDを検索しても、オペラ
「オルフェオとエウリディーチェ」が
出てくるばかりですが、
音楽史上では「オペラの改革者」として
位置づけられています。
その改革の第一弾が
「オルフェオとエウリディーチェ」
(1762年)だったのです。

本番に収録されている
バレエ音楽「ドン・ジュアン」は、
その「オルフェオとエウリディーチェ」の
前年1761年に書かれた曲であり、
「オペラ改革」前夜の作品なのです。
ドン・ジュアン(=ドン・ジョバンニ)の
最後の地獄落ちの場面や、
そこに至るまでの経緯が、
音楽によって丹念に、
そして劇的に表現されています。
まさに「オペラ改革」前夜にふさわしい
音楽として完成されているのです。

もう一つの
バレエ音楽「セミラーミス」(1765年)は、
より一層「オペラ改革」の成果が現れ、
ドラマの表現に一層の深みを
感じさせる出来映えとなっています。

ヴァイルの指揮は、
こうしたオペラティックな作品を、
実に細かく彫り込んでいき、
それぞれの物語に刻まれている
喜劇性と悲劇性を
丹念に描き分けています。
場面の移り変わりや
登場人物たちの動きと心情が、
あたかも眼前に浮かんでくるようです。
ターフェルムジーク管も、
作品の持つドラマと、
古典派作品としての味わいの両方を
引き出しながら
明晰な演奏を繰り広げています。
グルック、恐るべしと
いわざるを得ません。

当盤鑑賞に最適のSAKE

さて、調べてみると、
最近同じプログラムで録音された盤が
リリースされていました。
ジョルディ・サヴァールが指揮する
ル・コンセール・デ・ナシオンの一枚です。

また近年、オペラ
「オルフェオとエウリディーチェ」の
魅力的な新録音が登場しています。
カウンターテナーの
ジャルスキーがオルフェオ、
ソプラノの
フォーサイスがエウリディーチェを
演じた録音は、
これまで知られていなかった
1774年ナポリ版による
世界初録音として話題になりました。

また、
ファジョーリとハルテリウスの録音は、
近年録音が増えている
1762年ウィーン初演版を
採用しています。

今日のオススメ!

フローレスとガルメンディアによる
2008年の録音は、
1774年のパリ版となっています。
こうしたあたりが注目でしょうか。

さらに調べてみると、この
「オルフェオとエウリディーチェ」以外の
オペラも、近年
次々と録音されています。
オペラはゆっくり鑑賞するための時間が
必要であるため、なかなか積極的に
手を出せないでいるのですが、
退職後に挑戦してみたいと
思っています。
やはり、音盤は愉し、です。

(2022.8.27)

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