フレデリック・ギィのベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集

なぜ話題にならない!? いいと思うのですが…

年を取るごとに、
音楽の好みがベートーヴェン
集約されてきつつある私です。
したがって、
ベートーヴェンの作品の盤は
それなりに数が増えてきました。
ピアノ協奏曲全集もそうです。
一体何組買ったやら。
その中でも最近よく聴くのは、
このフレデリック・ギィの
新旧の全集です。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集

ベートーヴェン:
Disc1
 ピアノ協奏曲第1番ハ長調 Op.15
 ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 Op.19

Disc2
 ピアノ協奏曲第3番ハ短調 Op.37
 ピアノ協奏曲第4番ト長調 Op.58

Disc3
 ピアノ協奏曲第5番
  変ホ長調 Op.73「皇帝」

フレデリック・ギィ(p&指揮)
シンフォニア・ヴァルソヴィア
録音:2019年

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集

ベートーヴェン:
Disc1
 ピアノ協奏曲第1番ハ長調 Op.15
 ピアノ協奏曲第5番
  変ホ長調 Op.73「皇帝」

Disc2
 ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 Op.19
 ピアノ協奏曲第3番ハ短調 Op.37

Disc3
 ピアノ協奏曲第4番ト長調 Op.58
 ピアノと管楽器のための五重奏曲
  変ホ長調 Op.16

フレデリック・ギィ(p)
エレーヌ・デュヴィユンヌ(ob)
ジェローム・ヴォアザン(cl)
アントワーヌ・ドレイファス(hrn)
ジャン=フランソワ・デュケスノワ(fg)
フランス国立放送フィル
フィリップ・ジョルダン(指揮)
録音:2007-2008年

ベートーヴェンの
スペシャリストといえば、
ドイツ・オーストリア系の音楽家を
ついついイメージしてしまいますが、
フランソワ=フレデリック・ギィは
フランス人です。
よほど前に
チェロのガスティネルと組んだ
ベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集の
出来映えが良かったので、
ギィに注目し始めました。
その後、ピアノ・ソナタ全集を聴き、
一気に虜となり、
ジョルダンとのピアノ協奏曲全集
(旧録音)、そして先日
やっと入手したのが
ギィの弾き振りによる新録音全集です。

今日のオススメ!

ギィの素晴らしさは、その
バランス感覚ではないかと思います。
力強さを持ちながらも、
決してその音は固くならず、
流麗さを示しながらも、
音楽の構造を明確にする、
いわゆる「ちょうどいい」のです。
強弱は明確でありながら、その表現は
決して不自然にも嫌みにもならず、
癖のない自然体となっているのです。

第1番ハ長調op.15は、
若きベートーヴェンの強い意志が
感じられる作品なのですが、
ギィはそれを瑞々しく表現しています。
特に新録音の方は、
よりキビキビとした進行の中で、
ギィの愉悦に満ちたピアノが
鳴り響きます。

第2番変ロ長調op.19は、
第1番に先立って創られたため、
その構成は簡明であり、
やや味わいの薄い作品なのですが、
ギィはその細やかな色合いを
慈しむかのように
表情を描き分けています。
第2番については、
ピアノの音のより明晰な新録音と、
ジョルダンとフランス国立フィルの
明るい音づくりの旧録音の、
どちらを取るか迷うところです。

第3番ハ短調Op.37は、
ベートーヴェン唯一の
短調による協奏曲です。
ともすれば重くなりがちな
演奏が多いのですが、
ギィの透明感のある音色は
沈潜することなく見通しの良い演奏を
展開していきます。
新録音の方がより表情豊かに感じます。

第4番ト長調Op.58は、
明朗で詩的な楽想が魅力的な曲であり、
ギィの演奏もまた、それを
十全に引き出すことに徹しています。
注目は、新録音の第4番のみ、
カデンツァにブラームス作曲のものを
用いていることです(他は
ベートーヴェン自身のカデンツァ)。
おそらくは次世代の作曲家たちとの
繋がりを明確にしようとしたものと
考えられます。
加えて第4番のみ、
新録音の方がテンポが
ややゆったりめとなっています。

曲第5番変ホ長調Op.73は、
その名の通り、
あまたあるピアノ協奏曲の
「皇帝」的名曲です。
本盤はその中でも「名盤」として
認識されるべき立ち位置にあると
信じています。
新旧両盤ともギィのピアノは、
冒頭のカデンツァ的楽想の
きらびやかさ、
第2楽章の天国的な美しさ、
第3楽章の快活で華やかな展開、
それらの曲の「旨味」を
すべて引き出すことに成功しています。

旧録音のみ、
五重奏曲変ホ長調Op.16が
おまけのように収録されています。
あまり聴くことのない作品なのですが、
私はこの録音によって、
この曲の良さを認識した次第です。

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さて、魅力に溢れた録音なのですが、
なぜかあまり話題にはならないところが
残念です。
旧録音がリリースされた頃には、
伴奏を務めたジョルダンの
ベートーヴェン交響曲全集の録音
(Blu-rayによる映像)の方が話題を集め、
このピアノ協奏曲全集は
あまり盛り上がることなく
終わってしまいました。
早々に廃盤となり、
どうしたものかと思っていたところ、
新録音の登場となったのですが、
こちらはさらに話題にされず、
今に至っています。
これだけ素晴らしいのに、どうして!?
まあ、いいものを独り占めできるような
感覚に浸れるので、
それはそれで気分がいいのですが。

まだ未聴の方は、ぜひギィの
ベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集
新旧両盤、そしてギィの
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全集を
お試しください。
やはり、音盤は愉し、です。

(2022.8.28)

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