カプソン&ブラレイのベートーヴェン・ヴァイオリン・ソナタ

エレガントなドレス・スーツを身にまとったベートーヴェン

美しい!と
思わず口に出していいたくなるような
ベートーヴェン
ヴァイオリン・ソナタ全集です。
カプソンのヴァイオリンの音色も
美しければ、
ブラレイのピアノも美しい。
全10曲の、どこを切り取っても
ヴァイオリンとピアノが
美しく響き渡っているのです。

ベートーヴェン:
ヴァイオリン・ソナタ全集

ベートーヴェン:
Disc1
 ヴァイオリン・ソナタ
  第1番ニ長調op.12-1
  第2番イ長調op.12-2
  第3番変ホ長調op.12-3
  第4番イ短調op.23
Disc2
  第5番ヘ長調op.24「春」
  第8番ト長調op.30-3
  第9番イ長調op.47「クロイツェル」
Disc3
  第6番イ長調op.30-1
  第7番ハ短調op.30-2
  第10番ト長調op.96

ルノー・カプソン(vn)
フランク・ブラレイ(p)
録音:2009年

今日のオススメ!

まず、カプソンのヴァイオリンが
素晴らしいと思います。
まろやかで質感のある音色が
魅力的です。
あまり注目してこなかったのですが、
アルゲリッチの22枚組CD-BOXの
「ルガーノ・レコーディングス」に
収録されている
ベートーヴェンの第8ソナタ
(そして他の作曲家の作品数曲)が
いい音を出していて、
いつか買いたいと思っていました。

一方のピアノのブラレイもまた
いい音を響かせています。
ベートーヴェンの
ヴァイオリン・ソナタは、
ピアノの役割の大きな構成と
なっています。
ピアニストの力量が
重要になってくるのですが、
ブラレイの柔らかめのタッチは、
繊細かつ色彩感豊かな音色を
次々と紡ぎ出しているのです。
特にクロイツェル・ソナタ第2楽章での
真珠の粒が零れ落ちるような
音の集まりの美しさは秀逸です。

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Curator's Choice (キュレーター's チョイス)
当盤鑑賞に最適のSAKE

両者とも若いフランス人デュオらしい、
気品溢れる演奏が魅力なのでしょう。
ドイツの甲冑を着込んだ
堅くて重いベートーヴェンではなく、
エレガントなドレス・スーツを
身にまとった水も滴る好青年としての
人物像が表現されています。
全10曲を通して一気に聴くなら、
迷わずこの全集を選びたくなります。
聴き飽きずに聴き疲れもしない、
長く付き合える全集といえます。

録音も素敵です。
二人の美しい音色を
マイクが十分に捉えきっています。
特に高音の伸びが美しいままに
きちんと収録されていて
好感が持てます。
短期間で一気に収録されたため、
各曲の音質のばらつきも
ほとんど感じられず、
それ故に全曲一気に聴いても
違和感がないのです。

ベートーヴェンの
ヴァイオリン・ソナタも、もうそろそろ
買わなくてもいいかな、と思いつつ、
またもや手を出してしまいました。
最近は古楽のCD以外の購入が
ベートーヴェンに集約されつつあり、
反省しているところです。
でも、こうして
違いを味わえるのですから
やめられません。
やはり、音盤は愉し、です。

〔クロイツェル・ソナタについて〕
この全集録音、ただし、
好き嫌いは分かれそうです。
特にクロイツェルは穏やかすぎると
判断される可能性があるでしょう。
十分に情熱的であり、
それでいて澄んだ音を持続させた、
バランスの良い演奏なのですが、
以下に示したような
刺激的な演奏が好みの方には
不満が残るかも知れません。

一つはクレーメル&アルゲリッチ盤。
ヴァイオリンとピアノが
丁々発止のせめぎ合いを見せています。
当サイトでは
まだ取り上げていませんが、
押しも押されもしない
名盤中の名盤です。

そしてコパチンスカヤ&サイ盤。
自由闊達なコパチンスカヤの奏でる
ヴァイオリンは、
この曲を全く別物に変化させています。

今日のオススメ!

さらにボネ&ヴィソヴァン盤。
古楽器ということもあり、
原初のエネルギーを発散させたような
荒々しさがあります。

今日のオススメ!

クロイツェルだけを取り出した場合、
カプソンとブラレイの当盤は、
やや面白みに欠けていると
いわざるを得ませんが、
バランスを大事に考える方や、
全集として捉えている方にとっては
最良の一組になろうかと思われます。

(2022.9.11)

【ブラレイのベートーヴェン:CD】

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