若いお姉さんたちによる情熱的なベートーヴェン

BEETHOV3N TRIO SORA

先日、3年ぶりに
東京へ足を伸ばす機会があり、
新宿Disc-Unionへ行ってきました。
真っ先に籠に入れてしまったのが
この盤です。ジャケットに
魅力的なお姉さんが写っていると、
つい買って家に連れて帰りたくなる癖は
なかなか治らないものです。
でも、買って大正解。
ベートーヴェンのピアノ三重奏曲の
魅力を味わうことができました。

ベートーヴェン
ピアノ三重奏曲集 トリオ・ソーラ

BEETHOV3N TRIO SORA

ベートーヴェン:
 ピアノ三重奏曲

Disc1
  第1番変ホ長調 Op.1-1
  第2番ト長調 Op.1-2

Disc2
  第3番ハ短調 Op.1-3
  第5番ニ長調 Op.70-1「幽霊」

Disc3
  第6番変ホ長調 Op.70-2
  第7番変ロ長調 Op.97「大公」

トリオ・ソーラ
 ポリーヌ・シュネ(p)
 クレマンス・ド・フォルスヴィユ(vn)
 アンジェル・ルガサ(vc)
録音:2020年

このお姉さんたち、トリオ・ソーラは、
2015年結成の
ピアノ三重奏団ということなのですが、
日本ではまだ知られていないためか、
日本語による情報が
ほとんどありません
(英語と仏語によるHPはありました。
こちらからどうぞ)。
なんでも「ベルギーの
エリザベート王妃音楽院で
アルテミス四重奏団に師事」とあります。
アルテミス四重奏団自体が
感性豊かな若い演奏集団であり、
このお姉さんたちもそうした腕前を
見せてくれるのだろうと
期待して聴いてみました。
期待はまったく裏切られません。
切れのよい音が次から次へと
スピーカーから飛びだしてきます。

ピアノのポリーヌ・シュネは、
喜怒哀楽の激しい方なのでしょうか、
ヴァイオリンやチェロが
前面に出ているときは
至って安全運転なのですが、
ここがピアノの出番とみるや、
煽るような
激しいパッションを見せます。
ポリーヌお姉さんの単独の
ベートーヴェン・ピアノ・ソナタを
ぜひ聴いてみたいと思います。

1770 Beethoven

ヴァイオリンの
クレマンス・ド・フォルヴィユがまた、
鋭角的で攻撃的な音色を響かせます。
このクレマンスお姉さんの
ヴァイオリンが、
ベートーヴェンの楽曲の中でも
地味に感じられるピアノ三重奏曲を、
刺激的なものへと変化させています。
このお姉さんの場合は
バルトークあたりを
聴いてみたいと思いました。

そしてチェロのアンジェル・ルガサの
音色も艶があります。
重くならず溌剌とした
躍動感に満ちています。
ピアノやヴァイオリンに負けない
存在感を発揮しているのです。
このアンジェルお姉さんが演奏した
バッハ無伴奏は、さぞかし新しい感覚に
満ちているのではないかと
想像してしまいます。

BEETHOV3N – Trio Sōra

聴きどころは「大公」でもなく
「幽霊」でもなく(もちろんこの2曲も
素晴らしいのですが)、
実は「op.1」の3曲です。
こんなにも若々しさに
満ちあふれた曲だったのかと、
耳から鱗が落ちるような思いです。
考えてみると「op.1」は当然のごとく
ベートーヴェンのデビュー曲です。
若々しくて当然です。

BEETHOV3N – Trio Sōra

さらに特筆すべきは
本盤の音の良さです。
さすが優秀録音で定評のある
naiveレーベルです。
3つの楽器の音が
生々しく再生されます。
お姉さんたちの素敵な演奏を
100%捉えきっています。
スピーカーの前の
リスニング・ポイントに位置して
じっくり聴き込むと、
あたかも演奏しているお姉さんたちの
汗のしぶきが飛び跳ねているような
錯覚さえ感じます。
やはり音楽は
音がよくなければ愉しめません。

BEETHOV3N – Trio Sōra

ちょっとだけ残念なのは
「第4番op.11」が
入っていないことでしょうか。
クラリネットとチェロ、ピアノの
三重奏曲のためなのでしょうが、
たしかクラリネットパートを
ヴァイオリンで代用したものも
存在したはずです。
「op.11」と、「七重奏曲の編曲版」
「交響曲第2番の編曲版」を加えた録音を、
ぜひ後日リリースしてほしいと
願っています。
そしてこのお姉さんたちによる
ベートーヴェン・
トリプル・コンチェルトの実現も
期待したいところです。

当盤鑑賞に最適のSAKE

若いお姉さんたちによる
情熱的なベートーヴェンを
十分に味わうことができます。
やはり、音盤は愉し、です。

〔若いお姉さんたちによる
        ピアノ三重奏団〕

これまで取り上げた
クレアモント・トリオも素敵です。

(2022.10.9)

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