カラヤンのワーグナー「トリスタンとイゾルデ」

異世界へと入り込んだような気分に浸る

このところ、
古楽や室内楽ばかり聴いてきました。
料理も音楽も、重いものは
胃もたれするようになったからです。
でも、ときどきは聴いてみます。
昨日聴いたのは
思いきり重いワーグナー
それも楽劇「トリスタンとイゾルデ」
3時間40分あまり、
異世界へと入り込んだような気分に
浸りました。

ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」

Tristan und Isolde

ワーグナー:
 「トリスタンとイゾルデ」全曲

ジョン・ヴィッカーズ(トリスタン)
ヘルガ・デルネシュ(イゾルデ)
クリスタ・ルートヴィヒ(ブランゲーネ)
ヴァルター・ベリー(クルヴェナール)
カール・リッダーブッシュ(マルケ王)
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
録音:1971年、1972年

私はこの作品が好きで、
このカラヤン盤のほかに、
フルトヴェングラー、ショルティ、
クライバー、ベームといった
定評ある指揮者の盤、
そしてバレンボイムのDVD、
ビエロフラーヴェクのBlu-rayを
愉しんでいます。
中でもこのカラヤン盤は
スタイリッシュな指揮の下、
オーケストラが
雄弁に物語る演奏であり、
気に入っています。
スピーカーから
前奏曲が流れるとともに、
部屋の空気が神話性や官能性を帯び、
沈鬱な海を渡る船の甲板に
いるような感覚を覚えてしまいます。

私は歌詞対訳を見ながら
オペラを聴くのは
あまり好きではありません。
文字を追うので精一杯になり、
音楽に浸れないからです。
しかもすぐ現在位置が分からなくなり、
意味をなさなくなるからです。
その点、この「トリスタンとイゾルデ」は、
歌詞など分からなくても
問題ありません。
場面も大きな変化がなく、
登場人物の数も少なく、
歌手の動きも少なく、
ただただ主人公二人の
恋愛の内面の世界が
展開していくだけだからです。
何度かバレンボイムのDVDで
筋書きと舞台背景を覚えてしまえば、
CDでも十分に場面を連想できます。
その分、音響が創り出す世界に
浸ることができるのです。

今日のオススメ!

トリスタンのヴィッカーズは、
独特の声であり、
その配役には賛否両論あるのですが、
私は嫌いではありません。
オーケストラに埋もれない力強さは
トリスタンに必要なものであり、
癖のある声の方が存在感が際立ちます。
イゾルデのデルネシュも、
やや陰鬱な表情に満ちているのが
素敵です。
オペラの場合、どうしても
歌手の好みが気になるところですが、
私はあまり
気にしないようにしています。
それよりも歌唱そのものが
オーケストラの演奏と一体化し、
一つの音響世界を
創り上げているかどうかを
一つの指標としています。
カラヤン盤は、そうした意味でも
バランスのとれた演奏だと思うのです。

今日のオススメ!

古楽も魅力的です。
室内楽も素敵です。
でも、それらとはまったく異質な、
愛と官能の世界へと導かれる
ワーグナーのオペラの世界もまた
至福の時間を満喫できる
音楽体験なのです。
やはり、音盤は愉し、です。

1813 Wagner

〔「トリスタンとイゾルデ」のCD〕
素敵な演奏がまだまだあります。
クライバー盤は
歌手陣が理想的といえます。

ベーム盤は音が重厚であり、
巨大な建造物を仰ぎ見るような
感覚があります。
やや聴き疲れがしますが、
こちらも名盤です。

ショルティ盤は
ビルギット・ニルソンのイゾルデの
存在感が圧倒的です。
セッション録音の素晴らしさが
前面に押し出されている録音です。

フルトヴェングラー盤も
伝説的な名演であり、
決して無視できないのですが、
モノラル録音であり、
音響世界が広がらない点が
惜しまれます(致し方ないのですが)。

さて、
この「トリスタンとイゾルデ」も、
なかなかこれといったCDの新盤が
登場しません(オペラは総じて
そうなのですが)。
新しい演奏を探してみると、
意外に少ないのが現状です。
近いうちに購入して
聴いてみたいと思います。

(2022.10.23)

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