ヒレ・パールのサント・コロンブ「ヴィオール作品集」

市井の人々の哀しみに寄り添う音楽

「DHM-BOX」第1集第2集計100枚を、
丹念に聴いています。
「vivarte 60CD collection」同様、
音楽の宝石箱です。
古楽の世界はこんなにも広いのかと
驚かされっぱなしです。
今日も素敵な一枚を取り上げます。
サント・コロンブ
ヴィオール作品集です。

サント・コロンブ:ヴィオール作品集

Sainte Colombe

サント・コロンブ:
 7弦ヴィオールによるプレリュード
 クプレ
 再発見
 語り合い
 書きかえ
 トンボー
 嵌め込み
 威厳
 大急ぎ
 変化
 心移り

ヒレ・パール(gamb)
ローレンツ・ドゥフトシュミット(gamb)
リー・サンタナ(テオルボ)
アンドルー・ローレンス=キング(hp)
録音:1996年

サント・コロンブなる作曲家については、
記録があまり残っていません。
フランス音楽界で活躍
(作曲家・ヴィオール奏者)したのですが、
実名すら分かっていないという
始末です。
ヴィオールという楽器の
第一人者でありながら、
王宮に仕えることなく
(おそらくアマチュアか?)、
孤高の生涯を送った人物と
いわれています。
いくつかの資料では、
ジャン・ド・サント・コロンブであり、
1645年生まれ、
1701年没となっていました。
とりあえず当サイトでも
そのデータを採用しておきます。

そのヴィオール(フランス語)ですが、
イタリア語でいう
ヴィオラ・ダ・ガンバです
(この楽器の名称が
古楽をさらに分かりにくくしている)。
元来6弦であったものを、
このサント・コロンブが改良して
7弦にしたといわれています。

Sainte Colombe

サント・コロンブの現存する作品で、
最も演奏機会の多いのが
「2台のヴィオールのための合奏曲」
であり、なんと67曲もあります。
本盤はその中からセレクトした
11曲が収められています。
ただし、「2台のヴィオールのための」
曲であるはずなのですが、
テオルボやハープが
絡んでいるところを見ると、
何らかのアレンジが
施されているのかも知れません。

それにしてもなんとも渋い音楽です。
ヴィオールの深い音色が、
聴くものの心を静かに落ち着かせ、
内省的にしていくような
雰囲気を湛えています。
これは王宮のための音楽でもなければ
貴族の楽しむ音楽でもありません。
市井の人々の内面、
それも哀しみに寄り添うために
存在したであろう音楽です。
サント・コロンブが宮廷に仕えず、
したがって出世せず、
後世に正確な記録の残らなかったのも
理解できます。
350年前に、
このような深い精神世界を創り上げた
作曲家がいたことに驚きです。

さて、演奏のヒレ・パールですが、
ブレーメン生まれの
ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者です。
ザ・ハープ・コンソートと
フライブルク・バロック管の
メンバーとして活躍している
演奏家です。
オリジナル・ジャケットの
写真を見る限り、
この方も美貌の持ち主です。
この「DHM-BOX」第1集50枚組は、
充実した内容なのですが、
ジャケットがオリジナルでないところが
最大の欠点です
(第2集はオリジナルであり、
申し分ないのですが)。
技術や音色については、
比較対照すべきものがないので
なんともいえないのですが、
少なくとも美貌だけは気に入りました。
このレーベルからリリースされている
彼女の他の盤も、
素敵なセンス溢れるジャケットです
(ジャケットによって演奏の質が
左右されるわけではありませんが、
ジャケットの美しさは大切です)。
彼女の盤をこれから
集めていきたいと考えています。

DHM-BOX 1

またしても素敵な作曲家、
素敵な音楽、素敵な演奏家に
出会うことができました。
やはり、音盤は愉し、です。

(2022.10.29)

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