古楽器によるベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集

シュレーダーとインマゼールの真摯な演奏

先日から取り上げている
「DHM-BOX」ですが、
古楽だけではありません。
古典派やロマン派初期の作品も
収録されています。
今日取り上げるのは、
ベートーヴェン
ヴァイオリンソナタ全集です。
シュレーダーとインマゼールが
素敵な演奏を展開しています。

BOX2 Disc8~10
ベートーヴェン:
フォルテピアノと
ヴァイオリンのためのソナタ全集

BOX2 Disc8~10

ベートーヴェン:
Disc8
 ヴァイオリン・ソナタ
  第5番ヘ長調op.24「春」
  第4番イ短調op.23
  第3番変ホ長調op.12-3
  第8番ト長調op.30-3
Disc9
 ヴァイオリン・ソナタ
  第9番イ長調op.47「クロイツェル」
  第1番ニ長調op.12-1
  第2番イ長調op.12-2
Disc10
 ヴァイオリン・ソナタ
  第10番ト長調op.96
  第6番イ長調op.30-1
  第7番ハ長調op.30-2

ジョス・ファン・インマゼール(fp)
ヤープ・シュレーダー(vn)
録音:1986-87年

古楽器演奏というと、
革新的な演奏や実験的な解釈で
あることが多いのですが、
本盤はそうしたものではありません。
古楽器を用いて
その当時の音の再現を試みながら、
ベートーヴェンの音楽に
真摯に近づいていったような録音です。

最も大きな特徴は、
ヴァイオリンの音の温かさでしょう。
ヴァイオリンのヤープ・シュレーダーは
録音当時60代。
経験から積み重ねられた芳醇さが
音に現れています。
とんがったところの全くない、
まろやかな味わいがあり、
毎日でも聴いていたい演奏です。

そしてフォルテピアノの
インマゼールも、
ヴァイオリンに合わせた
丁寧な音づくりを行っています。
当然、現代のピアノのような
華やかさには欠けるのですが、
古楽器特有の音に耳が馴染んでくれば、
そこに清楚な輝きを
見いだせるはずです。
後に指揮者として録音した
ベートーヴェンの交響曲全集では、
駆け抜けるような爽快な演奏を
披露したインマゼールなのですが、
ここではそうした面は見られません。
シュレーダーとともに
ベートーヴェンに寄り添おうとする
姿勢が鮮明です。

1770 Beethoven

特に、
第1曲目に配置されたop.24「春」は、
そうした音づくりが、
最も効果的に現れた一曲でしょう。
温かみのある清々しい演奏です。
幸福感に満ちた明るい曲想に
合致したものとなっています。
そうした演奏が、2曲目以降、
最後まで続いていきます。

ところがディスク2枚目の冒頭、
「クロイツェル」になると、
当然様相が変わります。
この曲のみ、例外です。
特に第1楽章には
温かさなど似合わないため、
シュレーダーもインマゼールも
俄然気合いが入らざるを得ません。
しかしそこに見られるのは
ヴァイオリンとピアノの丁々発止とした
やりとりなどではありません。
静かに燃える二つの青い炎が、
渾然一体となって
燃焼しているかのような姿です。

今日のオススメ!

インマゼールはこのあと、
ミドリ・ザイラーとともにこの曲を
2007ー2009年にかけて
再録音しています。
そちらはまた違った聴こえ方がします。
今、聴き比べをしている最中です。

今日のオススメ!

ベートーヴェンの
ヴァイオリンソナタ全集は、
かれこれ十数組がCD棚に並んでいます。
そろそろ買うのは控えようと
思いながらも、またもや
一組追加となってしまいました。
でも、この一組も十分に愉しめます。
やはり、音盤は愉し、です。

関連記事:ベートーヴェンの
     ヴァイオリンソナタ全集〕

〔関連記事:
  インマゼールのベートーヴェン〕

(2022.11.5)

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