ルベルの素敵なトリオ・ソナタ

「四大元素」とは違う、バロック盛期の典雅な響

「DHM-BOX」第1集第2集を
現在愉しんでいるのですが、
それ以前に購入した
「vivarte 60CD collection」
第1集第2集計120枚には
見られなかった作曲家の作品も
数多く収録されていて、
古楽の世界の広さを
改めて思い知らされています。
今日取り上げるルベルもまた、
「vivarte-BOX」には入っていなかった
作曲家です。

「DHM-BOX」BOX1

BOX1 Disc41
ルベル「表題付きトリオ・ソナタ全集」

ルベル「表題付きトリオ・ソナタ全集」

ルベル
 トリオ・ソナタ
  イ長調「フローレ」
  ホ短調「ジュノン」
  ヘ長調「ヴィーナス」
  ハ短調「リュリ氏へのトンボー」
  ニ長調「パラス」
  ト短調「不死」
  変ロ長調「アポロン」

アンサンブル・ルベル
 Jorg-MichaelSchwarz(vn)
 Karern Marie Marmer(vn)
 Gall Ann Schroeder(va)
 Pieter Dirksen(cemb,org)
録音:1996年

ジャン=フェリ・ルベルは、
1666年生まれ(1747年没)の
フランス・バロック音楽の
作曲家兼ヴァイオリニストです。
現在演奏される作品としては、
不協和音に始まるバレエ音楽
「四大元素」が最も有名でしょうか。
演奏される機会の決して多いとは
いえない作曲家ですが、
存命時はかなり高名であったようです。
なぜならルイ14世の時代に
宮廷楽長および寵臣として
フランス貴族社会で
権勢をほしいままにした作曲家・
リュリの弟子として知られた
人物であるからです。
本盤収録4曲目
「リュリ氏へのトンボー」などは、
師・リュリの死に際して
書かれたものであり、
その沈痛な深い悲しみの旋律からは、
師弟関係の深さがうかがえます
(「トンボー」とは、フランス語で
墓石や墓碑、音楽用語としては
故人を追悼する器楽曲)。

1666 Rebel

「トリオ・ソナタ」というジャンルですが、
これは2つの旋律楽器と
1つの通奏低音のために作曲された
曲のことです。
17世紀末から18世紀初めにかけて
特に人気のあった音楽形式であり、
コレッリ、ブクステフーデ
パッヘルベル、ヴィヴァルディ
テレマンバッハなど、
バロック期の作曲家の多くが
作品を残しています。
3つの声部を形成するため
「トリオ・ソナタ」と呼ばれるのですが、
通奏低音は複数の奏者によって
演奏される場合もあるので、
演奏者が必ずしも3人であるとは
限りません。
本盤収録の7曲の演奏団体
アンサンブル・ルベルも、
ヴァイオリニスト2名に
通奏低音としてヴィオラ・ダ・ガンバ、
ハープシコードが加わる構成と
なっています
(鍵盤奏者Pieter Dirksenには、
使用楽器としてオルガンも
記載されているのですが、
どの曲に使用されているか
よく分かりませんでした)。

本盤のタイトルは
「表題付トリオ・ソナタ全集」と
なっていますが、これらは
「2声と3声のための12のソナタ集」という
曲集の中の、
3声の作品7曲が
取り上げられたものとなっています。
長調と短調の曲を交互に配置し、
その色合いの移り変わりは、
あたかも一つの筋書きを
物語るかのように流れていきます。
「四大元素」のような
疑似前衛的不協和音も
ここには顔を見せず、
フランス・バロック音楽の典雅な響を
十二分に愉しむことができます。

私としてはバロック盛期の華やかさが
前面に押し出されたかのような、
奇数番に配置された長調の曲の方が
好みです。
録音も秀逸であり、
アンサンブル・ルベルの
2挺のヴァイオリンが
とても美しく響き渡ります。
vivarteレーベルもそうでしたが、
このDHMレーベルもまた
優秀録音ばかりであり、
好感が持てます。
古楽のことをよく分からなくとも、
流れてくる音楽に身を任せると、
十分に愉しむことができます。
音の良さはやはり大切です。

こうなると、本盤収録以外の8曲、
2声の作品(ヴァイオリン・ソナタ)も
聴いてみたくなります。
音楽への興味関心は
次から次へとつながっていきます。
やはり、音盤は愉し、です。

〔ルベル「四大元素」〕

(2022.12.3)

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