ヘンデル&カルダーラ「DIXIT」

刺激的な宗教曲、一篇の映画を見たような気分

昨年秋から「DHM-BOX」
第1集第2集計100枚を愉しんでいます。
ようやく一通り聴き終えたところです。
すべてが愉しめます。
飽きることがありません。その中でも
特に刺激的な一枚が本盤です。
宗教曲ですが、
バッハのような厳かさではなく、
爽快な刺激で勝負した曲です。

DHM-BOX2

BOX2 Disc15
「ヘンデル&カルダーラ:宗教的作品集」

BOX2 Disc15

ヘンデル:
 主は言われた HWV.232
カルダーラ:
 悲しみのミサ
 クルチフィクスス
  「十字架につけられ」(16声)

トーマス・ヘンゲルブロック(指揮)
バルタザール=ノイマン・アンサンブル
バルタザール=ノイマン合唱団
録音:2003年

ヘンデルにまだこのような
傑作があったのか!?と
驚かずにはいられません。
ヘンデルと言えば
管弦楽の名曲「王宮」「水上」や
「合奏協奏曲」、そして
オラトリオ「メサイア」が
知られているところです。
それに加えていくつものオペラ作品も
注目され、
私も現在集めているところです。
ところが演奏時間30分ほどの宗教曲に、
このような刺激的な作品があったとは!

宗教曲といえば、
祈りのような静かな響きが
厳かに続くような
イメージがありましたが、
この曲は違います。
刺激に満ちているのです。楽曲は
以下のような構成になっています。
 1 Dixit Dominus
 2 Virgam virtutis tuae
 3 Tecum principium
 4 Juravit Dominus
 5 Tu es sacerdos
 6 Dominus a dextris tuis
 7 De torrente in via bibet
 8 Gloria Patri et Filio
第1曲では劇的で速いテンポの
合奏と合唱が展開します。
この冒頭部分から
引きつけられてしまいます。
第2曲では雰囲気が明るくなり、
簡素な伴奏にアルト独唱が入ります。
第3曲ではもの悲しいメロディへと
続きます。
ソプラノの独唱が美しく、
聴きどころの一つとなっています。
第5曲・第6曲では再び合唱が配置され、
緊張感が高まっていきます。
女声の二重奏から始まり、
それに男声が続き、
さらには合唱が加わり、
大きなうねりとなっていくのです。
そして興奮は頂点へと高まるのです。
第7曲は一転して
厳かな雰囲気を湛えた中で
ソプラノ二重唱に男声が絡みつきます。
そして終曲第8曲では
高らかに合唱が響き渡り、
ドラマチックな余韻を残しながら
幕を閉じます。

バッハとは異なり、聴き手を意識し、
愉しませようという試みが
随所に成されていると感じます。
エンターテインメントとしての
要素の多い音楽、
それがヘンデルの特徴なのでしょう。

で、ヘンデルのこの1曲で
満腹感に浸っていると、
次なる衝撃が襲ってきます。
カルダーラなる作曲家による宗教曲
「悲しみのミサ」です。
 1 Kyrie Eleison
 2 Christe eleison
 3 Kyrie eleison
 4 Gloria in excelsis Deo
 5 Domine Deus
 6 Domine Fili
 7 Qui tollis peccata mundi
 8 Quoniam tu solus sanctus
 9 Cum Sancto Spiritu
 10 Credo in unum Deum
 11 Crucifixus
 12 Et resurrexit
 13 Et vitam venturi saeculi
 14 Sanctus
 15 Benedictus
 16 Agnus Dei
 17 Dona nobis pacem 
以上のように、
17曲から構成された楽曲であり、
1曲は小規模のものなのですが、
その集合体として
緻密な音楽が創り上げられています。
ヘンデルと同様、起伏の激しい、
ドラマティックな物語が
展開していきます。

有名なヘンデルと
今ひとつメジャーとはいえない
カルダーラという作曲家の、
ともに刺激的な宗教曲を並べ、
あたかも連続した
一つの作品であるかのように聴かせる。
指揮のヘンゲルブロック、そして
バルタザール=ノイマン・アンサンブル
&合唱団の演奏が
素晴らしいのはもとより、
制作者のセンスの高さが光る
一枚といえます。
ジャケットも秀逸です。
ヘンデル作品のタイトル「DIXIT」が
鋭角的に立ち並び、まるで
ロックのCDのようなデザインです。

Caldara&Handel

このアントニオ・カルダーラ
Antonio Caldara (1670-1736)は、
バロック期の作曲家であり、
やはりヘンデル同様、
オペラやオラトリオを
数多く遺しています。
ただし現在、それらの多くは
埋もれたままであり、
CDとして聴くことのできる作品には
限りがあります。
検索していくと、器楽曲の分野の
作品のCDも見つかります。
これから探っていきたい作曲家です。

最後は5分あまりの小曲
「十字架につけられ」で
静かに幕を閉じます。
この一枚全体を聴き通すと、
言葉は分からないなりに、
音楽だけで一篇の映画を見たような
気分にさせられます。
素敵な時間を味わうことができました。
やはり、音盤は愉し、です。

(2023.1.7)

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