ブルゴーニュの歌「ロム・アルメ」による6つのミサ曲

この優秀録音こそ、vivarteレーベルの真骨頂

「vivarte-BOX」第1集第2集計120枚を
聴いて以来、古楽への興味が高まり、
BOXに収録されていない
vivarteレーベルの盤を探しています。
BOXで特に素敵だった
ウエルガス・アンサンブルの一枚を
入手することができました。
すべて世界初録音という、
珍しい作品の音盤です。

ブルゴーニュの歌「ロム・アルメ」による
6つのミサ曲

6 Masses After a Burgundian Song

作者不詳:
 第1のミサ曲より:サンクトゥス
 第2のミサ曲より:クレド
 第3のミサ曲より:キリエ
 第4のミサ曲より:サンクトゥス
 第5のミサ曲より:
  クレドーアニュス・デイ
 第6のミサ曲より:クレド

ウエルガス・アンサンブル
パウル・ファン・ネーヴェル(指揮)
録音:1989年

ルネサンス期のフランス語による、
作者不詳の世俗音楽である
「ロム・アルメ」。
日本語訳としては
「武装した人」が一般的です。
この「ロム・アルメ」は、
ルネサンス期の作曲家が、
ミサ曲を作曲するときに
定旋律として使用しました。
作曲家としてはデュファイ、
ジョスカン・デ・プレ、ラ・リューなどが
有名でしょうか。
このミサ「ロム・アルメ」には、
作者不詳のものがあり、
そうした6曲を集めた
写本が存在するそうです。
本盤は、その写本に収められた
6曲のミサ「ロム・アルメ」から
それぞれ1つの楽章を取りだし、
録音したものなのです。

タイトルにある「ブルゴーニュの」とは、
いわゆる「ブルゴーニュ楽派」であり、
15世紀に現在のベルギー・オランダ・
ルクセンブルクとフランス東北部を
中心としたブルゴーニュで
活躍した作曲家達をいいます。
作者不詳であるものの、
この地域での音楽家の
作品ということでしょう。
ブルゴーニュは、現在は
フランス中東部の一地方に
すぎないのですが、
14世紀から15世紀にかけては、
この地方で繁栄した大公国だった
ブルゴーニュ公国
存在していたのです。
ここでポリフォニー音楽が
発達していきました。

6 Masses After a Burgundian Song

「vivrte-BOX」で何度か紹介している
ネーヴェルと
ウエルガス・アンサンブルですが、
本盤でも透明感溢れる見事な
アンサンブルを聴かせてくれます。
未知の作曲家や作品を
精力的に発掘しようとする
彼らの姿勢が
最もよく現れた盤といえるでしょう。

冒頭の無伴奏の合唱こそ、
ウエルガス・アンサンブルの
本領発揮でしょう。
人間の声はここまで表現することが
可能なのかと、その精緻な
アンサンブルに驚かされます。
途中から器楽が入るのですが、
それも合唱を損なうことなく
美しさを引き立てていきます。
このレーベルの特徴なのですが、
その音を新鮮なまま封じ込めたような
録音の優秀さには目を見張る
(耳を見張る)ものがあります。
30年以上経っても見事に
鮮度を保っているこの優秀録音こそ、
vivarteレーベルの真骨頂です
(このレーベルがなくなったのは
本当に残念!)。

さて本盤は、vivarteレーベルが
立ち上がった当初の1991年2月に
第1回発売分としてリリースされた
4枚の音盤のうちの一つです。
キルヒホーフによる
バッハ・リュート作品集

ベルニウスによるバッハ・モテット集
同じウエルガス・アンサンブルの
ブリュメル・12声のミサ曲
の3枚は
vivarte-BOXに
収められているのですが、
この一枚だけは
あまりにもマニアックだったためか、
収録されていません。
貴重な盤だと感じています。

本盤発売時、私は
クラシック音楽専門誌・レコード芸術を
愛読していたのですが、
毎回表紙をめくった見開きに、
このレーベル立ち上げのPRが
掲載されていた記憶があります。
クラシック初心者だった私は、
その価値をまったく理解できず、
vivarteレーベルの音盤で
当時購入したのは
シューベルトのミサ曲の4枚だけで
終わってしまいました。
このような価値ある録音が
出ていたことに気づくのが
遅すぎました。
いや、まだまだこれからです。
魅力ある音盤を探し出すこと自体が
楽しみの一つです。
やはり、音盤は愉し、です。

(2023.1.8)

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