ほどほどの刺戟と十分な美しさ、ゴルツの「四季」

分厚い通奏低音とオマケのソネット朗読

ヴィヴァルディ「四季」といえば、
すでに「通俗名曲」となり、
もう聴かなくてもいいのではとの思いも
湧いてきます。
しかし、まだこんな素敵な演奏が
隠れていたなんて。
「DHM-BOX」第1集に収録された
フライブルク・バロック管と
ザ・ハープ・コンソートによる録音です。

DHM-BOX1

フライブルク・バロック・オーケストラ
&ザ・ハープ・コンソート
ヴィヴァルディ:四季

ヴィヴァルディ:四季

ヴィヴァルディ
 ヴァイオリン協奏曲集
   「和声と創意の試み」Op.8より
  第1番ホ長調 RV269「春」
  第2番ト短調 RV315「夏」
  第3番ヘ長調 RV293「秋」
  第4番ヘ短調 RV297「冬」
  第5番 変ホ長調 RV253「海の嵐」
  第6番 ハ長調 RV180「喜び」
 「四季」へのソネット朗読

ゴットフリート・フォン・デル・ゴルツ
(指揮&Vn)
フライブルク・バロック・オーケストラ
アンドリュー・ローレンス=キング
(ハープ&指揮)
ザ・ハープ・コンソート
録音:1996年

誰もが知っているように、
「四季」はそれぞれ
春・夏・秋・冬と題された
4つの協奏曲から成り立っています。
この4曲は、独奏ヴァイオリンのほか、
第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、
ヴィオラ、通奏低音からなる
オーケストラのために書かれた
協奏曲です。
通奏低音のパートは
他のパートのように特定の楽器が
指定されていないため、
チェロやコントラバスといった
低音弦楽器のほか、
ファゴット、チェンバロ、オルガン、
リュート、ギターなどで
演奏することが可能となっています。

1660 Vivaldi

本盤の特徴の一つは、
この通奏低音が分厚いことです。
フライブルク・バロック管だけでなく、
ハープ・コンソートが参加し、さらには
アンドリュー・ローレンス=キングの
ハープまで加わり、場面に応じて
多種多様な彩りを添えるという
これまでになかった演出が
なされているのです。通奏低音奏を
これだけ贅沢に盛り込んだ演奏は
他に例を見ないはずです。

そのため、ともすれば
とげとげしい演奏になることもある
古楽器演奏に、
まろやかな美しさが
加わっているのです。

もちろん、古楽器演奏団体として、
清冽で爽快な演奏であることは
間違いありません。
ところどころではっとさせられる
フレーズも数多く登場します。
しかし決してせかせかした
演奏ではないのです。
激しいところは激しく、
緩やかなところは十分に美しく、
豊かな表現力に満ちあふれた
演奏となっているのです。
本録音を一言で表現するなら
「ほどほどの刺戟と十分な美しさ」という
ことになるでしょう。

さて、「四季」で興味深いのは、
各楽章において
四季折々の様々な情景を表す
ソネットと呼ばれる詩が
付けられていることです。
「四季」の音楽は、それらの情景を
描写している作品なのです。

本盤のもう一つの特徴は、
このソネット朗読が、
全6曲演奏のあとに
附されているということです。
もちろん私はイタリア語を聴いて
理解できるわけではありませんが、
その朗読も巧みな表現が成されていて、
その語り口から
それとなく情景が浮かんでくるのです。
なかなか気の利いた「オマケ」です。

録音は1996年。本盤が登場してから
すでに四半世紀が過ぎていたのです。
この素敵な録音に
気づかないまま過ごしていたなんて。
もはや「四季」を
通俗名曲などといっていられません。
まだまだ隠れた名録音が
あるかも知れないのですから。
やはり、音盤は愉し、です。

(2023.2.18)

【関連記事:ヴィヴァルディ「四季」】

【「四季」の音盤はいかがですか】

【関連記事:DHM-BOX第1集】

【今日のさらにお薦め3作品】

【こんな音盤はいかがですか】

コメントを残す