テレマンの「ヴィオラ・ダ・ガンバのための作品集」

ヒレ・パールの素敵なヴィオラ・ダ・ガンバを堪能する一枚

ヴィオラ・ダ・ガンバは、
バロック期を代表する楽器の一つです。
ヴァイオリン属に比べて
ヴィオラ・ダ・ガンバは
音量が小さいため、
劇場や野外での演奏には不向きでした。
一方、その
繊細で柔らかい優雅な響きが好まれ、
宮廷や上流市民の家庭における
室内楽に用いられてきたという
歴史があります。
長所と短所は表裏一体であり、
どちらを取るかという問題なのです。

DHM-BOX2

BOX2 Disc46
「テレマン:
 ヴィオラ・ダ・ガンバのための作品集」

BOX2 Disc46

テレマン:
 ソナタ ロ短調
  (vn・va・gamb・BC)
 協奏曲ニ長調
  (vn・gamb・BC)
 協奏曲イ長調
  (gamb、2vn・BC)
 組曲ニ長調
  (gamb・弦楽・BC)
 協奏曲ト長調
  (va or gamb・弦楽・BC)

ヒレ・パール(Gamb)
ペトラ・ミュレヤンス(Vn)
フライブルク・バロックオーケストラ
録音:2006年

このヴィオラ・ダ・ガンバは
フランスで特に人気があったようで、
先日はBOX1に収録されている
サント・コロンブの作品集を
取り上げました。
実はフランスの作曲家による作品が
最も多いのだそうです。
ただ、フランスでは
「ヴィオール」と呼ばれているのですが、
基本的な構造は同一です。
こちらはドイツの
テレマンの作品集です。
ドイツでもヴィオラ・ダ・ガンバは
注目され、大バッハはもちろん、
ガンバの名手・アーベルに次いで、
このテレマンはドイツ人の中でも
ガンバを愛した作曲家の一人です。

サント・コロンブの音盤でも
演奏しているヒレ・パールが、
ここでも素晴らしい音色を
聴かせています。
しかし、サント・コロンブ盤とは
音楽の方向性がまったく異なります。
サント・コロンブ盤は、
ヴィオールの深い音色を
しっとりと味わうための音楽です。
こちらのテレマンは、
5曲中3曲が協奏曲であり、
フライブルク・バロック管との共演が
聴かせどころとなっているのです。
これがまた
しっとりと聴かせるというよりも、
緊張感を伴って
キビキビと進行するのですから、
ヴィオラ・ダ・ガンバ自体の
役割が異なるといえるでしょう。
エネルギッシュな
ヴィオラ・ダ・ガンバ演奏なのです。

どちらが良いとはいえません。
サント・コロンブもテレマンも、
そうした音楽を
書いただけのことであり、
そこに優劣など存在しないのです。
そしてその180度異なる方向性に、
見事に対処し、ガンバの魅力を
説得力を持って提示している
ヒレ・パールの演奏能力の高さにこそ
注目すべきなのです。

ヴィオラ・ダ・ガンバの
ヒレ・パールも素敵なのですが、
オケのフライブルク・バロック管も
いつもながらの見事な演奏を
披露しています。
このオケの演奏技術が、
テレマンの音楽の魅力を
最大限に引き出しているのです
(かつてヒレ・パールはこの
フライブルク・バロック管の一員)。

さて、このテレマン
かなり多作な作曲家なのでした。
「多作」といえば、
何といってもヴィヴァルディ
800曲を作曲したといわれています。
そしてヘンデル
600曲を創り上げています。
さらに大バッハ。
その数何と1100曲。
ところがこの3人と比較して
知名度のまったく低いこのテレマンは、
なんと少なくとも4000曲を
生み出したといわれているのです
(ギネスブック世界認定されている!)。

1681 Telemann

テレマンを
一気に好きになれる演奏です。
これまで私は
「ターフェル・ムジーク」しか
知らなかったのですが、
これから長く付き合えそうな予感を
感じています。
まだまだ整理されていない
楽譜があるのですから、
これから新しいテレマン作品集が
いくつも現れるのでしょう。
その初期の音盤として、
本盤は貴重な存在です。
テレマンと、ヒレ・パールの
両方の魅力を味わうことのできる
音盤です。
やはり、音盤は愉し、です。

〔関連記事:ヒレ・パールの音盤〕

(2023.2.25)

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