ビーバーとステッファーニの素敵な声楽曲

心を洗われるレクイエムとスターバト・マーテル

ここにも名曲が隠れていました。
ビーバーのレクイエムと
ステッファーニの
スターバト・マーテルです。
「DHM-BOX」には古楽、
それも声楽曲の名曲が
いくつも収められていますが、
この盤も素敵です。2曲とも、
心を洗われるような美しい
きらめきに満ちた旋律が魅力的です。

DHM-BOX1

BOX1 Disc13
ビーバー:レクイエム &
ステッファーニ:スターバト・マーテル

Biber & Steffani

ビーバー:
 15声のレクィエム イ長調
ステッファーニ:
 スターバト・マーテル

マルタ・アルマジャーノ(S)
ミーケ・ヴァン・デア・スロイス(S)
ジョン・エルウィス(T)
マーク・バドモア(T)
フランス・ホイツ(Br)
ハリー・ヴァン・デル・カンプ(Bs)
グスタフ・レオンハルト(指揮)
オランダ・バッハ協会バロック管
オランダ・バッハ協会バロック合唱団
録音:1994年

当サイトでもこれまで
ロザリオ・ソナタなどを取り上げてきた
ハインリヒ・ビーバーは、
1644年生まれの
オーストリアの作曲家です。
ヴァイオリニスト、それもかなり高度な
技巧を持った演奏者だったため、
ロザリオ・ソナタのような
ヴァイオリンの難曲を
数多く創り上げているのですが、
宗教曲ももちろん作曲しています。
「レクイエム」については
2曲作曲していて、
1687年に創られた
「15声部のレクイエム イ長調」
(本番収録)は、編成も大きく
演奏時間は40分以上かかります。
もう一つの、作曲年代不明の
「5声部のレクイエム ヘ短調」は、
演奏時間30分弱程度の
コンパクトな編成となっています。

今日のオススメ!

収録されている
「15声部のレクイエム」は、イ長調と、
レクイエムにしては珍しい
長調作品です。
モーツァルトをはじめとする
幾多のレクイエムに比して、
聴感上も明るく聴こえます。
どちらかというと
祝祭的なイメージのする、
「死者のため」ではないミサ曲といった
趣です。

しかしながら、
演奏者たちはその作曲意図を
しっかり理解し、
華美にならない清楚な表現に
徹しています。独唱者たちも
朗々と歌いきるのではなく、
その歌い方はあくまでも禁欲的であり、
好感が持てます。
レクイエムならではの
厳かさが演出され、それが美しさへと
昇華している感があります。

Biber & Steffani

一方の
アゴスティーノ・ステッファーニ
イタリアの作曲家なのですが、
ビーバー同様に17世紀末のドイツで
活躍した作曲家です。
ミュンヘンの
宮廷オルガニストを務めるなど、
演奏家としても活躍しました。

本盤に収録されている
「スターバト・マーテル」は、
6声の独唱と6つの弦楽器、
オルガンのために書かれた作品です。
ビーバーのレクイエムから一転、
悲哀感の漂う曲調なのですが、
その旋律の美しさは
聴き応えがあります。

今日のオススメ!

第1曲の沈鬱に満ちた伴奏から始まる
ソプラノ独唱から、
心を奪われてしまいます。
続く第2曲は、
合唱の美しさが際立つ冒頭と、
そこから続くソリストの歌唱が
聴きどころとなっています。
美しい旋律は最後の第12曲まで
いたるところに現れ、
そのたびに心が揺さぶられます。
このような名曲が
まだまだ古楽の世界には
数多く存在しているのです。

ここでも
オランダ・バッハ協会バロック管と
合唱団が
味わいのある音色を響かせています。
古楽器の素朴な音色と精密な合唱は
祈りに満ちていて、
澄み渡った音響空間を
創り上げています。
ソリストたちの実力も十分であり、
聴き応えのある歌唱を聴かせます。
それらをまとめ上げ、
一つの音楽として完成させた
指揮者レオンハルトの統率力は
見事としかいいようがありません。

こうした素敵な音楽を聴いてしまうと、
「その次」を聴きたくなります。
ビーバーのもう一つの
「5声部のレクイエム」は、
ぜひ購入して
聴いてみたいと思っています。

また、ステッファーニについては
歌手チェチーリア・バルトリが
その作品の発掘と再評価に情熱を傾け、
3種のアルバムを制作しています。
こちらも注目したいと思います。

BOXはそのレーベルの
集大成なのでしょうが、
聴き手からすればスタート地点です。
ここからさらに
音盤を愉しんでいきたいと思います。
やはり、音盤は愉し、です。

(2023.3.4)

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