ガルス「オプス・ムジクム」を聴く

まるで天国に昇ろうとしているかのような

「vivarte 60CD collection」
第1集第2集計120枚を
愉しんでいますが、
その中でもウエルガス・アンサンブルに
強く惹かれ、BOXに収録されていない
音盤を探し求めています。
今日の一枚は、
そうして購入したものです。
ヤコブス・ガルス
全く聞いたことのない名前でした。
後期ルネサンス時代の
フランドル楽派に属する作曲家です。

ガルス「オプス・ムジクム」

ガルス「オプス・ムジクム」

ガルス:
 オプス・ムジクム
  さあ、主の山に登ろう(8声)
  主よ、私は懇願します(4声)
  三つの奇跡で備えられた(12声)
  驚くべき神秘が(5声)
  東方より博士たちが
   ベツレヘムに来た(4声)
  主の祈り。天に
   いらっしゃる私たちの父よ(8声)
  ヤコブは二人の息子を
   嘆き悲しんだ(6声)
  私の神よ、私を敵から
   助け出してください(5声)
  私のキタラは喪の調べを奏で(5声)
  過酷な苦悩よ、何ゆえに私を
   かくも支配するのですか
   マグダレーナとキリストの対話
    (8声のエコー様式)
  おお、祝福された三位一体(8声)
  ダヴィデ王は息子アブサロンの
   死に声をあげて泣いた(8声)
  イエスのやさしき想い出(6声)
  主なる神よ、あなたのしもべの
   祈りを聞いて下さい(16声)
 「サンクタ・マリーア」に基づくミサ
  キリエ
  グローリア
  クレド
  サンクトゥス
  アニュス・デイ

ウエルガス・アンサンブル
パウル・ファン・ネーヴェル(指揮)
録音:1994年

このガルスは、
現在のスロベニアの生まれです。
各地を転々とし、
1579年から1585年にかけては、
モラビアでオロモウツ司教の
宮廷楽長に就任し、活躍した人物です。
1550年生まれの1591年没ですから、
その生涯はわずか41年と
短いものなのですが、
その間に500曲もの作品
(そのほとんどが宗教曲)を
残したとされています。

古風な多声音楽の作法をベースとした
作品が多いのですが、
代表作としては、
4巻からなるモテット集
「オプス・ムジクム」
(Opus musicum)でしょう。
本盤に収録されているのは
そこから抜粋された14曲です。
すべて2分から4分半程度
(7曲目のみ6分半とやや長め)の
短めの曲ばかりで、聴きやすく、
古楽に馴染みのない方でも
十分に愉しめるはずです。

全篇心が洗われるような
清浄な響きが魅力なのですが、
その中でも聴きどころの一つは
3曲目の12声
「三つの奇跡で備えられた」でしょうか。
厚いハーモニーが心地よく響きます。
続く4曲目の5声「驚くべき神秘が」は
シンプルな構成でありながら、
洗練された音楽を
感じ取ることができます。

前半8曲は無伴奏合唱なのですが、
9曲目からは器楽伴奏が入ります。
その9曲目、5声
「私のキタラは喪の調べを奏で」は、
冒頭のやや長めの序奏が
神秘的な雰囲気を醸し出していて、
その後に続く合唱が
ドラマチックに感じられます。
14曲目の16声
「主なる神よ、あなたの…」は、
強い祈りを感じさせる
劇的な雰囲気の曲となっています。
こうしたあたりが
聴きどころでしょうか。

「サンクタ・マリーアに基づくミサ」は、
無伴奏であり、
後の時代のミサ曲と比較すると
かなりシンプルに聴こえます。
静かな曲調の中に、
限りない喜びが満ち溢れていて、
まるで天国に昇ろうとしているかの
ような雰囲気を湛えています。

1550 Gallus

例によってネーヴェル指揮の
ウエルガス・アンサンブルの演奏は、
心に染み入るような
極上のハーモニーを聴かせてくれます。
この団体の音盤を、
すべて集めてみたいと
思うようになりました。

本盤もまたすでに流通しておらず、
廃盤状態となっています。
幸いにも中古で入手できました。
この宝石のような録音を、
十分に味わい、
愉しんでいきたいと思います。
やはり、音盤は愉し、です。

〔ガルスの音盤について〕
ガルスの作品のみで構成された音盤は
限られています。
その意味でも本盤は貴重です。
Amazon上では
次の2点が見つかります。

(2023.3.12)

【ウエルガス・アンサンブル】

【今日のさらにお薦め3作品】

【こんな音盤はいかがですか】

コメントを残す