クープランの素敵な室内楽作品集

「午後」「夜」「眠り」「朝」「午前」とつながる音楽

フランソワ・クープランは、
1668年生まれの
フランスの作曲家であり、
バロック時代に活躍しました。
バッハ一族と同じように
多くの音楽家を輩出した
クープラン家の中でも
もっとも有名となった人物であり、
大クープランと
呼ばれることもあります。
そんなクープラン
素敵な室内楽を集めた一枚です。

DHM-BOX1

BOX1 Disc17
フランソワ・クープラン:室内楽作品集

BOX1 Disc17

クープラン:
 四重奏ソナタ「サルタン」
 ヴィオールと
  通奏低音のための第1組曲
 子守唄、または
  ゆりかごの中のいとしい子
 ヴィオールと
  通奏低音のための第2組曲
 トリオ・ソナタ「荘厳さ」

ジェイ・ベルンフェルド(gamb)
スキップ・センペ(指揮&cemb)
カプリッチョ・ストラヴァガンテ
録音:1993年

クープランの作品の中で主要な位置を
占めるのはクラヴサン曲集です。
全4巻に27のオルドル(組曲)を構成し、
約220曲が収められています。
こちらもそのうち全曲
聴いてみたいと思っているのですが、
クープランは室内楽の分野でも
素晴らしい作品を残しています。

今日のオススメ!

1曲目の
四重奏ソナタ「サルタン」(ニ短調)は、
2つのヴァイオリンと
2つのヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)と
通奏低音によって演奏される、
緩・急・緩・緩・急・急の6楽章からなる
作品です。
表題は「サルタン妃」を
表しているようですが、
当時のパリで流行していた
東洋趣味の影響と考えられます。
どこかもの悲しげであり、
かつ荘重な楽想が印象的です。
おそらくクープランは「サルタン妃」を、
「憂いを秘めた物静かで美しい女性」と
イメージしていたのでしょう。

2曲目の
ヴィオールと通奏低音のための
第1組曲は、
冒頭に「プレリュード」を配し、
6つの舞曲を演奏する
古典的な教会ソナタの様式に
準じる一方で、
イタリア風の色合いを織り交ぜた
作品です。
この時代のフランスでは、
イタリア様式の吸収を試みた
作曲家が多く、
クープランもその一人でした。
こちらも哀愁を帯びた旋律が美しく、
静かな夜に似合う
素敵な演奏となっています。

一方、4曲目の第2組曲は、
4曲からなる構成で、
おおらかで明るい曲調が
味わいどころでしょう。
第1組曲が
「静かな夜のための音楽」であるなら、
この第2組曲は
「朝のための音楽」といえるでしょう
(おそらく2曲で一対の
作品なのかも知れません)。
ただし、一般庶民の
「にぎやかな朝」や
「忙しい朝」ではありません。
宮廷で迎える「静かな朝」なのです。
どこまでも品位を失わない音づくりは、
クープランらしさといえるでしょう。

その2つの組曲に挟まれた
3曲目の「子守唄」は、
クラヴサン作品の第15オルドルからの
編曲となっています。
その表題通り、安らぎに満ちた
静かな旋律が紡がれていきます。
第1組曲と第2組曲を
そのまま並べるのではなく、
間にこの曲を挿入することによって、
夜から朝への転換が
見事に表されているように感じました。

最後のトリオ・ソナタも素敵です。
伸びやかで颯爽とした曲想が
魅力的です。
緩・急・緩・急・緩・急の6楽章からなる
作品なのですが、
特に「急」の部分の軽快な旋律が
躍動感を感じさせます。

1668 Couperin

一通り聴くと、
「午後」→「夜」→「眠り」
→「朝」→「午前の活動期」と、
一つの流れを感じさせる
構成になっています。
このあたりは音盤の制作者の
センスの良さなのでしょう。
録音も優秀で、
楽器一つ一つがしっかりとした輪郭で
再現されています。
音楽に浸る喜びが
感じられる音盤となっているのです。
クープランの室内楽を
十分に堪能できる一枚です。
やはり、音盤は愉し、です。

※ジャケット裏のトラック表記では、
 第2組曲がトラック10、11となり、
 全12トラックとなっているのですが、
 実際には
 第2組曲のトラックは10~13、
 トリオ・ソナタがトラック14となり、
 全14トラックが
 正しいものとなります。
 海外のBOXものは得てして
 表記ミスが多く、残念に思います。

(2023.3.18)

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