シュッツのシンフォニア・サクレ第3集

ハインリヒ・シュッツ、恐るべき作曲家です。

ドイツの初期バロック音楽を代表する
ハインリヒ・シュッツ
大バッハ生誕のちょうど100年前の
1585年に生まれ、
ドイツ音楽に息吹を与えた
「ドイツ音楽の父」と呼ばれています。
また、ヨハン・ヘルマン・シャインや
ザムエル・シャイトとともに
「3S」とも呼ばれています。
今日取り上げるのは、
「DHM-BOX」第2集に収録されている
一組です。

DHM-BOX2

BOX2 Disc41-42

BOX2 Disc41-42

シュッツ:
 シンフォニア・サクレ第3集 Op.12
  1 主はわたしの牧者である
  2 わたしは目をあげて山を仰ぐ
  3 主が家を
    建てられるのでなければ
  4 息子よ、どうして
    こんな事をしてくれたのです
  5 主よ、どうぞわれらを
    お救い下さい
  6 主の御使いが、夢で、
    ヨセフに現れて言った
  7 新しい粉のかたまりに
    なるために、
    古いパン種をとり除きなさい
  8 おお優しきイエス・キリストよ
  9 おお優しきイエスよ
  10 われらの神なる主を讃えよう
  11 一人の種まきが
    種をまきに出て行った
  12 あなたがたの父なる神が
    慈悲深くあられるように
  13 ごらんなさい、この幼な子は
    反対を受けるしるしとして
    定められています
  14 天にましますわれらの父よ
  15 見よ、兄弟が
    和合して共にいるのは
  16 その日がわなのように
    あなたがたを捕らえることが
    ないように
  17 先生、わたしたちは、
    あなたが真実なかたで
    あることを知っています
  18 サウロ、サウロ、
    なぜわたしを迫害するのか
  19 主よ、いつまでもわたしを
    お忘れになるのですか
  20 来れ聖霊よ、主なる神よ
  21 全てを神に感謝しよう

マリア・シュデリウス(S)
モニカ・フリンマー(S)
ミーケ・ファン・デル・スルイス(S)
シュテファン・ギーンガー(B-S)
マイケル・チャンス(C-T)
ジョン・エルウィス(T)
クリストフ・プレガルディエン(T)
デヴィッド・トーマス(Bs)
コルネリウス・ハウプトマン(Bs)
シュトゥットガルト室内合唱団
ムジカ・フィアタ・ケルン
フリーダー・ベルニウス(指揮)
録音:1988年

オルガン奏者としてそのキャリアを
スタートさせたシュッツは、やがて
イタリア初期マドリガルの様式で、
独語の宗教的テキストに音楽を付した
声楽曲を作曲するようになります。
シンフォニア・サクレも
そうした曲集の一つであり、
新旧約聖書の言葉に曲を付けた
器楽付の多重聖歌集といった内容の
曲集となっています。
第1集SWV257-276(1629年)、
第2集SWV 341-367(1647年)、
そして本番収録の
第3集SWV 398-418(1650年)と
創られました。

「第2集」については、
「vivarte-BOX」に収録されていて、
以前取り上げています。

演奏は同じ
ムジカ・フィアタ・ケルンなのですが、
指揮者はローランド・ウィルソン、
ソリストを配置せず、
声楽アンサンブル
「カペラ・ドゥカーレ」が
すべて受け持っている盤です。

作品として聴いた場合、
当然第3集の方が構成も複雑となり、
より精緻な響きが
愉しめる作品となっています。
わずか3年の間に、これだけ音楽的な
進化が見られることに驚きます。
しかもバッハ
100年前の時代であるにもかかわらず。
ハインリヒ・シュッツ、
恐るべき作曲家です。

1585 Schutz

演奏は、実力派ソリストたちが
見事な表現力を発揮し、
作品のドラマティックな面が
強調されています。
それによって、
よりバッハの宗教曲に肉薄するような
出来映えとなっているのです。
対訳がないため
歌詞は理解できないのですが、
そこにおそらく書かれてあるであろう
宗教的物語が、
人間味を持って聴き手に迫ってきます。
それをしっかり捉えきっている
録音の優秀さも特筆ものです。
DHMレーベルの録音は、
質朴な古楽器の音色に艶やかな光を
与えたような音づくりであり、
好感が持てます。

今日のオススメ!

シンフォニア・サクレ第2集も
素晴らしかったのですが、
第3集はもっと素敵でした。
こうなるとシュッツの作品を
さらに聴いてみたくなります。
Carusというレーベルから出ている
CD28枚組のシュッツ作品全集を
何とかして購入したいのですが、
先立つものがなく、
思いとどまっています。
いやいや、これから聴く楽しみが
大きく広がっているのだと
捉えましょう。
やはり、音盤は愉し、です。

(2023.3.25)

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