モロッコからのアンダルシアの音楽

教会音楽とは異なる、もう一つの音楽の原点

「DHM-BOX」第1集第2集計100枚を
愉しんでいるのですが、
この「DHM-BOX」は、
50枚組BOX2種類だけでなく、
10枚組程度の小BOXが
いくつも出ているのです。
今日はその中の一つ
「地中海音楽エディション」からの
一組です。
ほとんど民族音楽としかいいようのない
不思議な音楽世界です。

地中海音楽エディション

Mediterranean Music Edition

Disc1-2
モロッコからのアンダルシアの音楽

Mediterranean Music Edition Disc1-2

CD1:
 naubatu r-raSdi,
  mīzānu l-quddāmi (1st part)
 naubatu r-raSdi,
  mīzānu l-quddāmi (2nd part)

CD2:
 naubatu l-māyati,
  mīzānu l-basīt
 naubatu l-māyati,
  mīzānu l-quddāmi

フェズ・モロッコ・アンサンブル
録音:1977年

アンダルシアというのは
スペイン南部の地域(自治州)であり、
モロッコというのは
アフリカ大陸の北西端の国です。
ちょうどジブラルタル海峡を挟んだ
向かい合う地域で、しかも
海峡は最狭14kmしかありません。
地理的には同一の地域といっても
いいくらいであり、
文化の交流も盛んだったのでしょう。

アンダルシア音楽とは、
イスラム王朝下のイベリア半島、
つまりはアンダルシア地方で
9世紀から15世紀頃までに完成した
アラブ古典音楽の総称であり、
その起源はさらにバグダッドへと
遡ります。
そのバグダッドの音楽は、
トルコ音楽の影響を受けて
大きく変化してしまいました。
一方、
アンダルシアはその影響を受けず、
バグダッドの伝統が保持されたまま、
音楽が深化し、
アンダルシア音楽となったのです。
そしてジブラルタル海峡を渡って
モロッコをはじめとする
北アフリカ各地の地中海沿岸都市の
人々に受け継がれていきます。
オスマン支配を逃れた
モロッコにおいて、
「アンダルシア音楽」は
その原形をほぼ保ちながら
現在へと至っているのです。
つまり、「アンダルシア音楽」とは、
いくつもの土地を彷徨った
アラブ音楽の原点であり、
モロッコはその終着点といえるのです。

では、どのような音楽か?
調べてみたのですが、難しすぎて
さっぱりわかりませんでした。
2枚のCDに収録されている
音楽についても、
ジャケット裏の記載を
そのまま転記したのですが、
何が何やら不明です。
それぞれの盤はトラックが2つだけで、
1曲が30分弱という
長い曲となっています。それも
ドラマなどまったく感じさせない、
似たような旋律の繰り返しだけです。
いくつかの
弦楽器管楽器らしきものによる伴奏に、
うなっているような
少人数の歌声が重なっています。

演奏団体である
フェズ・モロッコ・アンサンブルですが、
ネット検索しても情報が集まりません。
本盤の発売元情報によると
「500年以上前から現在まで
伝えられている音楽を
そのまま伝え」ている
団体らしいのですが、
他に音盤はつくられていないようです。

1977年録音ですので、
当初はLPで発売されていたのでしょう。
それが1990年代にはCD化され、
そして2014年に
当BOXに収納されたもののようです。

これを2枚連続で
約100分間聴き通すのは、
かなりの集中力と根気を要求されます。
慣れない方であれば、
途中でプレーヤーをとめるか、
あるいは夢の世界へ入り込むかの
どちらかでしょう。
しかし、丹念に聴いていくと、
砂漠の風景とそこに息づく民の生活とが
目の前に広がってくるような
印象を受けるのです。
それとともにここからは、
グレゴリオ聖歌に代表される
教会音楽とは明らかに異なる、
音楽のもう一つの原点の姿を
聴き取ることができるのです。

古楽をいろいろと聴いていくのは、
音楽のルーツ探しの
旅のようにも思えてきます。
やはり、音盤は愉し、です。

(2023.4.2)

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