悪魔のフォルクレの姿はいかに?

フォルクレのヴィオールとクラウザンの作品集

フォルクレに関しては、
「vivarte-BOX」にも
「クラウザン作品集」
(レオンハルトによるクラウザン曲集)

収録されているのですが、
「DHM-BOX」にも
この一枚が収められています。
ベルンフェルドによるヴィオールと
センペによるクラウザンの演奏です。
ヴィオール作品のほうが、
フォルクレの旋律の魅力が
引き立っているようにも感じます。

DHM-BOX 1

BOX1 Disc19
アントニ・フォルクレ:
「ヴィオール小品集とクラヴサン小品集」

BOX1 Disc19

フォルクレ:
 Allemande La Laborde
 La Cottin
 La Portugaise
 La Forqueray
 La Régente
 La Marella
 Sarabande Lad’Aubonne
 La Ferrand
 La Couperin
 Chaconne La Buisson
 La Leclair
 La Rameau
 Jupiter
ジェイ・ベルンフェルド(gamb)
スキップ・センペ(cemb)
録音:1991年

このアントワーヌ・フォルクレは、
フランスのバロック期の作曲家であり、
1671年生まれ(ただし確定していない)、
1745年に没しています。
作曲家であるとともに、
ヴェルサイユ宮殿で活躍した
ヴィオールの名手でした。
ちなみにヴィオールというのは
現代のチェロに似た楽器ですが、
異なる系統に位置する楽器であり、
呼び名としてはイタリア語の
ヴィオラ・ダ・ガンバのほうが
浸透しているかと思われます。

1671 Forqueray

当時、フォルクレは、
フランスのヴィオール奏者としては
マラン・マレとともに
「双璧」と呼ばれるほどの
名手だったのです。
優雅で穏やかな美音を特色とするマレが
「天使のようなマレ」と
呼ばれたのに対して、
フォルクレは激しく鬼気迫る演奏を
得意としたことから
「悪魔のようなフォルクレ」と
呼ばれていました。
その評価は、おそらく両者の
気質の違いを表しているのでしょう。

面白いことに、
フォルクレは自らに出来上がった
神秘的なイメージの保持を望んで、
自作を出版しなかったという
経緯があります。よって、
作品はほとんど残っていないため、
そのままであれば「幻の作曲家」として
後世に伝説として
伝わったのかも知れません。
ところが長男ジャン=バティストは、
父親アントワーヌの作品が
埋もれることを惜しみ、
父親の死後の1747年、
そのヴィオール曲集、
およびそのクラヴサン独奏用の編曲版を
出版したのです。
ただし、父アントワーヌの作品に、
おそらくは子ジャン=バティストによる
大幅な編曲が加えられていることは
明らかであり、
どこまでが父で、どこからが子かは
よく分からないようです。

さて、演奏ですが、
先日取り上げたクープランの
室内楽作品集でも共演した二人であり、
しっかりと息のあった演奏を
聴かせています。
枯れた音色を素朴に響かせる
ベルンフェルドのヴィオール、
哀愁を帯びた音色で
それを支えるセンペのクラウザン、
これこそが古楽を聴く喜びです。

今日のオススメ!

こうして聴いてみると、
その音楽からは「悪魔」という要素は
見いだせないのですが、
どうなのでしょう。
「悪魔」はおそらくフォルクレの
演奏に対して付せられた愛称であり、
フォルクレの創り上げた
音楽そのものには
当てはまらないような気がします。

こうなると、
ヴィオール作品集の録音で、
フォルクレとマレの
聴き比べをしたくなりました。
両者のヴィオール作品が
一枚に収まっている音盤か、
同じ演奏者のフォルクレ盤とマレ盤を
比較するか、
そのうち試してみたいと思います。
音楽に対する興味は尽きません。
やはり、音盤は愉し、です。

(2023.4.29)

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