ゼレンカとピゼンデルによるシンフォニアと協奏曲集

BOXから新しい作曲家との出会いが始まる

クラシック音楽における
CD-BOXの利点は、
知らない作曲家の音楽と
出会えることです。
今日の一枚もそうです。
単独では絶対に
買わなかったであろう盤であり、
DHM-BOX
収録されていたからこその出会いです。
バッハと前後して誕生した
二人の作曲家の
素敵な音楽を聴くことができます。

DHM-BOX1

BOX1 Disc50
ゼレンカ&ピゼンデル
「シンフォニアと協奏曲集」

BOX1 Disc50

ゼレンカ:
 ヒポコンドリア イ長調 ZWV187
ピゼンデル:
 協奏曲ニ長調
ゼレンカ:
 協奏曲ト短調 ZWV186
ピゼンデル:
 ソナタ ハ短調
ゼレンカ:
 シンフォニア イ短調 ZWV189

ゴットフリート・フォン・ゴルツ
 (指揮&vn)
フライブルク・バロック・オーケストラ
録音:1994年

3曲収録されているゼレンカですが、
バッハより6年早い
1679年生まれの作曲家です。
主にドレスデンで活動し、
コントラバス奏者兼作曲家として
活躍しました(この時代、
コントラバス奏者で宮廷音楽家として
高い位置についた音楽家は
珍しいのではないかと思います)。
バッハとも面識があったようで、
バッハはゼレンカを高く
評価していたことが知られています。

宗教曲を数多く
作曲したゼレンカですが、
ここに収められている作品3曲は
すべて器楽作品です。
1曲目
「ZWV187 7声のヒポコンドリア」は、
穏やかな印象の宮廷音楽風の曲です。
軽くもなく重くもなく、
落ち着いた雰囲気から始まり、
次第に軽快な旋律が展開していきます。
3曲目
「ZWV186 8声の協奏曲ト長調」は、
3楽章からなる協奏曲です。
オーボエやヴァイオリンの独奏部が
チャーミングな曲であり、
同時代のバッハやヘンデルともまた
異なった肌触りが感じられます。
5曲目の
「ZWV189 8声のシンフォニア」が
これまた素敵です。
5楽章のシンフォニアですが、
第2楽章アンダンテの美しさに
魅了されます。
この3分あまりの楽章を、
繰り返し聴いてしまいました。

一方のピゼンデルは2曲、
ゼレンカ作品に挟まれるように
配置されています。
このピゼンデルは
バッハの2年遅れとなる1687年に
誕生した作曲家です。
当時、ドイツ随一のヴァイオリニストと
評されたほどの
実力の持ち主だったようです。
実はゼレンカとは親友どうしであり、
ピゼンデルはゼレンカの死後に、
その作品の出版に尽力したと
伝えられています。
本盤は、それ故のこの二人の作品の
カップリングなのです。

そのピゼンデル作品、
2曲目の「協奏曲ニ短調」が素敵です。
第一楽章はヴァイオリン独奏部が
魅力的であり、
短いながらも聴かせどころの多い
音楽となっています。
第二楽章はゆったりとしたテンポで
進行し、ヴァイオリンが
叙情的な旋律を紡いでいきます。
第三楽章では華やかな音楽が展開し、
明るく締めくくっていきます。

4曲目の「ソナタ ハ短調」は、
2つの楽章を持つものの、
全体が4分弱の演奏時間であり、
コンパクトな小品となっています。
第一楽章ラルゴが
もの悲しげなメロディを奏でたあとに、
第二楽章アレグロの
速いテンポの音楽が続きます。
短いながらも味わい深い
素敵な音楽です。

ピゼンデルは、実はあまり
多くの作品を残していません。
ヴァイオリン協奏曲10曲、
コンチェルト・グロッソ4曲、
ヴァイオリン・ソナタ2曲のほか、
トリオ・ソナタとシンフォニアが
1曲ずつだけなのです。
それらの中からの2曲ですが、
その質の高さに驚かされるばかりです。

現代における知名度は今ひとつの
ピゼンデルですが、
ヴィヴァルディやアルビノーニ、
テレマンといった一流の作曲家たちが
作品を献呈している当時実力No.1の
ヴァイオリン奏者であり、
バッハの傑作
「無伴奏ヴァイオリンのための
ソナタとパルティータ」も、
実はピゼンデルのために
書かれたのではないかという説も
あるほどなのです。

Zelenka & Pisendel

もっと多くのゼレンカ作品、
ピゼンデル作品と
出会ってみたいと感じさせる一枚です。
BOXから
新しい作曲家との出会いが始まり、
次の音盤との出会いへと
つながっていくのです。
やはり、音盤は愉し、です。

〔ゼレンカの音盤について〕
ゼレンカの音盤は数多く見つかります。
CPOレーベルから
「ゼレンカ・管弦楽作品全集」が
3枚組でリリースされていて、
購入を考えているところです。

また、ACCENTレーベルからは
ゼレンカの宗教作品が数枚出ていて、
注目しています。

〔ピゼンデルの音盤について〕
作品数が多くないため、
必然的に音盤も限定的です。
面白そうなのは、
「Per Monsieur Pisendel」と題された
2枚の音盤です。
ヴィヴァルディやアルビノーニらが
ピゼンデルに献呈した作品と
ピゼンデル自身の作品を組み合わせた
音盤です。

ぜひ聴いてみたいと思います。

(2023.5.27)

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