アンサンブル・ディアーロギの室内楽演奏

モーツァルト&ベートーヴェンのピアノと管楽器のための五重奏曲集

ピアノ、クラリネット、オーボエ、
ファゴット、ホルンという、
他の作品には見られない編成の2曲。
モーツァルトベートーヴェン
それぞれ作曲した「ピアノと
管楽器のための五重奏曲集」です。
モーツァルトが創り上げ、次いで
ベートーヴェンが編み上げたこの2曲。
これまであまり
注目してこなかったのですが、
こんなに素晴らしい曲だったのかと
思い知らされました。

モーツァルト&ベートーヴェン
ピアノと管楽器のための五重奏曲集

Quintets For Piano And Winds

モーツァルト:
 ピアノと管楽器のための五重奏曲
  変ホ長調 K.452
ベートーヴェン:
 ピアノと管楽器のための五重奏曲
  変ホ長調 作品16

アンサンブル・ディアーロギ
 クリスティーナ・エスクラペス(fp)
 ロレンツォ・コッポラ(cl)
 ピエール=アントワーヌ・
  トレンブレイ(hrn)
 ジョセプ・ドメネク(ob)
 ハヴィエル・ザフラ(fg)
録音:2015年

2018年に本盤が発売となったとき、
そのジャケット写真を見て、
「もしかしてゲテモノ?」という不安から
手を伸ばすのを控えていました。
その後、ネットでの評判はうなぎ登り、
ついに購入してしまいました。
正解でした。
素晴らしい演奏です。
もっと早く出会っておけばよかったと
思わせる一枚です。

アンサンブル・ディアーロギは
古楽器団体です。
それぞれの奏者はこれまであまり
名前を聞くことがなかったのですが、
それはどうやら私の「無知」というべき
ものだったようです。
ネットで検索すると、
管楽器のメンバーは
古楽器オーケストラの名手であり、
フォルテ・ピアノのエクスラペスも
相当の実績を積み重ねた
奏者であることがわかりました。

古楽器の演奏がまた、いいのです。
この2曲をモダン楽器で聴いたときは、
あまり素敵には感じなかったのですが、
古楽器による編成のバランスが
絶妙なのです。
ピアノがやや
引っ込んだ感じになるのですが、
その分、管楽器の音色を
味わい深く聴き取ることができます。
この2曲に関しては、
モダン・ピアノはあまりにも
強力すぎたことがわかります。
本盤からは、この曲はこの部分で
こんな音が聞こえていたのかと
驚かされる部分が多々ありました。
フォルテピアノと古楽器による
管楽器群の、何と相性の良いこと。
惚れ惚れとしてしまいます。

モーツァルトはこの曲に
自信を持っていたことが、
当時の書簡からうかがえます。
初演後に父・レオポルトに宛てた
手紙の中に、「私は2曲のピアノ協奏曲
(K.450・K.451)と五重奏曲を
作曲しましたが、
私自身これまでの作品の中で、
この曲を最高のものだと思います」との
一文があるのです。

そしてベートーヴェンは、
明らかにこの曲を意識して自らの
五重奏曲を書き上げたと思われます。
この珍しい編成の曲を
あえて創ったこと、
楽章構成や3つの楽章が
同じ調性で一致していることなど、
「オレならこう創るぜ!」という
対抗意識丸出しの
曲となっているのです。

Mozart & Beethoven

そうした素敵な2曲が、なぜかここまで
注目されてこなかったのは、
ひとえにモダン・ピアノと管楽器との
バランスの悪さだったのではないかと
思わずにはいられません。
私も、ブレンデルとホリガーらの盤を
持っているのですが、
ピアノの印象ばかりが強く、
管楽器の魅力に気づくことが
できないでいました。

この2曲こそ、
古楽器で演奏されるべきという、
説得力に富んだ演奏です。
この盤に出会ってしまうと、
もうこの曲の現代楽器演奏には
戻れないのではないかという、
強力な磁場を持った音盤です。
やはり、音盤は愉し、です。

〔アンサンブル・ディアーロギの動画〕
ホルン奏者のトレンブレイの
YouTube公式チャンネルにおいて、
この2曲の動画が公開されていました。

Mozart K. 452 (III)
Beethoven Op. 16 (II)

〔アンサンブル・ディアーロギの音盤〕

〔ピアノと管楽器のための五重奏曲〕
このような音盤が注目です。

(2023.8.6)

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