ヌリア・リアル「The Spanish Album」

ヌリア・リアルの美声に浸る

以前、ヘンデルのアリア集で取り上げた
ソプラノ歌手ヌリア・リアルの美声が
あまりにも心に染み込んできたため、
さらに聴いてみたいと思っていました。
目をつけたのがこのアルバムです。
初期録音からの音源を集めた2枚組、
ヌリア・リアルの歌が、
ぎっしりと詰まっています。
やはり素敵です。

ヌリア・リアル
The Spanish Album

The Spanish Album

Disc1
ルネサンス時代の音楽
 ムダーラ
 ピサドール
 フエンリャーナ
 ダサ
 バスケス
 フレーチャ
 モラレス
 バルデラーバノ
Disc2
ルネサンス&初期バロック時代の音楽
 オルティス
 フエンリャーナ
 フレーチャ
 ナルバエス
 アルカデルト
 バスケス
 デ・ミラン
 アラニェス
後期バロック時代の音楽
 コルセッリ

ヌリア・リアル(S)
ホセ・ミゲル・モレーノ
 (ビウエラ&ルネサンス・ギター)
オルフェニカ・リラ
エミリオ・モレーノ(vn&指揮)
エル・コンチェルト・エスパニョール
録音:1999~2004年

タイトルが示すとおり、
彼女の故国スペインの音楽、
それも16世紀から18世紀にかけての
ルネサンスとバロック期の歌が
収められているのです。
輸入盤を購入したため、
曲目が今ひとつはっきり読み取れない
(語学力の関係で)ため、
詳細な構成は分かりません。
ネット上の情報をあたっても、
上記の作曲者名のデータしか
掲載されていません。
Disc1は全24曲、
Disc2は全19曲であり、
盛りだくさんな内容です。

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エステバン・ダサ
(またはダザ、Esteban Daça)は、
生年1537年頃、没年1591年頃の、
ルネサンス期の
スペインの作曲家であり、
ビウエラ奏者でもありました。
ビウエラ
ルネサンス期のイベリア半島、
イタリアの一部と中南米で用いられた、
ギターに似た形状の弦楽器です。
当時、ギターの人気が高まり、
ビウエラは廃れていったため、
ダサは16世紀最後の
ビウエラ奏者の一人となりました。
本盤には3曲収録されています。

フアン・バスケス
(1500年頃-1560年頃)もまた
ルネサンス期の作曲家です。
スペインの司祭であり、
フランシスコ・ゲレーロ、
クリストバル・デ・モラレス、
フアン・ナバロ・
ヒスパレンシスらとともに
アンダルシア楽派の作曲家グループの
一員とみなされています。
本盤には5曲収録されています。

そのバスケスの属した
アンダルシア楽派の一人、
クリストバル・デ・モラレス
(1500c-1553)は、
数多くのミサ曲を作曲したことで
有名であり、
モテットは100曲以上、
マニフィカトは18曲、
エレミアの哀歌は少なくとも5曲
存在しています。
本盤には2曲収められています。

バスケスの1曲を編曲している
ディエゴ・ピサドール(1509-1557)も、
ビウエラ奏者兼作曲家です。
残念なことに、彼の生涯についての
詳細は不明のままとなっています。
本盤には編曲も合わせて
5曲が採用されています。

詳細が不明な作曲家としては
エンリケス・デ・バルデラーバノ
(1500c–1557)も同様です。
ビウエラ奏者兼作曲家であることしか
分かっていません。
本盤には1曲のみ取り上げられています。

本盤5曲目に収録されている作曲家
マテオ・フレーチャ
いささかやっかいです。
同姓同名で二人いるからです
(叔父と甥で同名!)。
日本語の解説書であれば(老)(若)を
名前に冠して区別しているのですが、
どちらなのか分かりません。
ただし、アレンジを施した人物として
ミゲル・デ・フエンリャーナ
(1500c-1578)の名が
クレジットされていることから、
年齢的に
(老)フレーチャ(1481-1553)で
間違いはないでしょう。
(老)フレーチャは
スペイン・カタルーニャ地方で生まれた
作曲家です。

そのミゲル・デ・フエンリャーナですが、
本盤にはそのアレンジ曲を含めると
13曲が収められています
(ヌリア・リアルは
フエンリャーナ曲集を
リリースしていて、この13曲は
そのアルバムからの抜粋ではないかと
思われる)。
やはりスペインのルネサンス期の
作曲家であり、ビウエラ奏者です。
生まれたときから
盲目だったと言われています。
スペイン王フェリペ2世に捧げた
「オルフェニカ リラの楽譜」が
作品としては有名です。

アロンソ・ムダーラ(1510c-1580)は、
やはりビウエラのための楽曲で
知られる作曲家なのですが、
世俗歌曲の作曲家でもあります。
記録に残るうちでは、
ギター曲を最初に出版した人物です。
5曲収録されています。

The Spanish Album

Disc1に収録されている
作曲家だけでもこれだけいます。
Disc2は、これらの中の
フレーチャ、フエンリャーナに加え、
5名の作曲家が名を連ねているのですが、
割愛したいと思います。

それにしてもヌリア・リアル、
やはり美しい歌声です。
声楽はあまり得意ではなく、
音盤も超有名歌手による
超スタンダード盤しか
購入していなかったのですが、
DHM-BOXでヌリア・リアルを知り、
歌のよさに気づくことができました。
古楽界のソプラノとして
揺るぎのない地位を占めた
ヌリア・リアル。
さらなる活躍が楽しみです。
やはり、音盤は愉し、です。

〔ヌリア・リアル:ヘンデルアリア集〕

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(2023.8.27)

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