ベレヴィ「キプリアーナ」を聴く

不思議な相性を見せる、ギターとヴァイオリン

ヴァイオリンの珍しい曲はないかと
探していて、見つけた音盤です。
ケマル・ベレヴィという
聞いたことのない現代の作曲家です。
しかもヴァイオリンとギターという
組み合わせ。
聴いてみたのですが、ギターを伴奏に、
ヴァイオリンが歌っているという
印象です。
なかなか素敵な音楽でした。

キプリアーナ
ヴァイオリンとギターのための作品集

Belevi : Cypriana

ベレヴィ:
 ギターのための5つの
  ロマンティックな小品
  ~第4曲「キャッチ22」
 キプリアーナ
 クラウズ
 ワルツ イ長調
 ある夏の日~第10曲「月」
 エアーとダンス
 ワルツ第3番
 ヴァイオリンとギターのための
  4つのスケッチ
 キプロス組曲
  (ラプタ/エレジー/チフテテリ)
シルヴィア・グラッソ(vn)
リヴィオ・グラッソ(g)
録音:2021年

このケマル・ベレヴィという作曲家、
1954年にキプロスのニコシアで
生まれています。
キプロスという国は、私たちには
あまり馴染みのない国ですが、
地中海東部に位置するキプロス島の
大部分を占める共和制国家です。
キプロス共和国自体は、
国連加盟国193か国のうち、
192か国が承認している、
れっきとした独立国家ですが、
複雑な領土問題を抱えた国です。

キプロス島の一部はイギリス領であり
(英国軍の基地が置かれていて、
キプロス側は返還を要求しているが
英国は無視)、
共和国領ではありません。
さらに1974年以来、
キプロスは南北に分断され、
島の北部約37%を、
トルコ系住民による
北キプロス・トルコ共和国
(国際的にはトルコのみが
承認している「独立国家」)が
占めています。
つまり、分断国家なのです
(ただし、これによりキプロスは
ほぼギリシャ系の単一民族国家となり、
韓国・北朝鮮のように、
同一民族の分断とは異なる)。

こうした故国の事情からなのでしょう、
ベレヴィの音楽は、
分断された故郷の島に存在する
多様な国民的影響を
反映したものとなっているのです。
基本的にはトルコ音楽の影響が
強いようですが、
ギリシャ・中東・西ヨーロッパの影響も
反映されているようです。

1954 Belevi

彼の経歴も特異であり、
音楽活動の出発点はなんと
ロックとポップ・ミュージック。
11歳でギターを手に取り、
14歳で兄のバンドに
参加していたということでした。
ところがクラシックギターに目覚め、
1972年に英国へ移住、
研鑽を積むことになります。

そうした背景があるためか、
本盤に収録された曲の印象は、
これまで聴いてきた
どの作曲家の音楽とも異なります。
ギター伴奏は地中海やスペインの
民族色が感じられるのですが、
ヴァイオリンが奏でる旋律は、
きわめて欧風です。
しかも、わかりやすい旋律が
現れる曲が多い一方で、
現代曲特有の難解さが目立つ曲
(5曲目:ある夏の日、
8曲目:4つのスケッチ)もあります。

今日のオススメ!

しかし最も大きな特徴は、
ギターとヴァイオリンという
構成でしょうか。
同じ弦楽器といえども、
その2つで構成されている音楽は、
少なくとも私のCD棚には
他にありません。
相性がいいようには思えないのですが、
こうして聴いてみると
不思議な味わいを醸し出しています。

実は演奏している二人の演奏家にも
そうした印象が当てはまります。
ギターのリヴィオ・グラッソは
色黒で縮れ毛の野趣溢れる風貌で、
南国風の音色を響かせていますが、
ヴァイオリンのシルヴィア・グラッソは、
色白の見目麗しい女性であり、
まったく印象が異なります。
しかし、二人は
どうやら夫婦であるようです。
相性がいいようには見えないのですが、
Facebookを見る限り、
抜群の相性のようです。
また、本盤のレーベル・NAXOSからは
YouTubeを通じて
動画も配信されています。
こちらでも息のあった
演奏の様子がうかがえます。

Naxos Music

さて、本盤との出会いですが、
冒頭に記したように、
ヴァイオリンの珍しい曲を
探していたのは事実ですが、
実はジャケットのシルヴィアを見て、
すぐさま購入した次第です。
美しいお姉さんが写っている
ジャケットを見ると、
中身も確かめずに買ってしまうという
悪い癖が、
またしても出てしまいました。
何はともあれ、
素敵な音楽に出会えたのですから
問題ありません。
やはり、音盤は愉し、です。

〔ケマル・ベレヴィ作品の音盤〕

(2023.9.24)

【美人お姉さんのジャケット音盤】

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