小澤征爾/コンプリートRCA&コロンビアBOXを聴く

その1 若き日の協奏曲録音5枚

今年8月末に登場した
「小澤BOX」を買ってしまいました。
オーケストラのCDはもう買わなくても
いいのではと思っていたのですが、
日本を代表する指揮者・
小澤征爾のCD-BOXであり、
しかも完全限定。
以前発売されたドイツ・グラモフォンの
BOXを買い逃して悔やんだこともあり、
今回は予約購入しました。
一通り聴き終えましたが、
やはり素晴らしい内容です。

Ozawa-BOX
今日のオススメ!

今回は初期の協奏曲録音から
以下の5枚を取り上げます。

CD 1

CD1

テレマン:
 オーボエ協奏曲ニ短調
ヴィヴァルディ:
 オーボエ協奏曲ヘ長調 P.306

ハロルド・ゴンバーグ(ob)
コロンビア室内管弦楽団
小澤征爾(指揮)
テレマン:
 オーボエ・ソナタ ハ短調
ヘンデル:
 オーボエ・ソナタ ト短調 作品1-6

ハロルド・ゴンバーグ(ob)
ゴンバーグ・バロック・アンサンブル
モーリス・ニューマン(fg)
ナザン・スタッチ(vc)
イゴール・キプニス(cemb)
録音:1964・1965年

CD 2

CD2

バルトーク:
 ピアノ協奏曲第1番 Sz.83
 ピアノ協奏曲第3番 Sz.119

ピーター・ゼルキン(p)
小澤征爾(指揮)
シカゴ交響楽団
録音:1965・1966年

CD 3

CD3

メンデルスゾーン:
 ヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64
チャイコフスキー:
 ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35

エリック・フリードマン(vn)
小澤征爾(指揮)
ロンドン交響楽団
録音:1965年

CD 4

CD4

シューマン:
 ピアノ協奏曲イ長調 作品54
R.シュトラウス:
 ブルレスケ ニ短調

レナ-ド・ペナリオ(p)
小澤征爾(指揮)
ロンドン交響楽団
録音:1965年

CD 6

CD6

チャイコフスキー:
 ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 作品23

ジョン・ブラウニング(p)
小澤征爾(指揮)
ロンドン交響楽団
録音:1966年

録音はすべて1964~66年。
小澤がまだ30歳そこそこのあたりの
録音です。
61年のN響事件により
日本を去った小澤ですが、その後、
次々と演奏会を成功させるとともに、
このように音盤をリリース
し続けたのですから、
実力は確かなものだったのです。

CD1は、
小澤には珍しいバロック音楽です。
小澤は本来、ロマン派以降の
近現代の音楽を得意としています。
しかしこれが欧米の
メジャー・レーベル初録音です。
不得意などとは
言っていられなかったのでしょう。
テレマンヴィヴァルディ
そつなくこなし、
ゴンバーグのオーボエの味わいを
最大限に引き出しています。

CD2は、ピーター・ゼルキンとの
バルトークのピアノ協奏曲。
こうなると小澤の独壇場です。
当時はまだまだ難解な音楽だったはずの
バルトークを、見通しよく演奏し、
ピアノを盛り立てています。
ピーター・ゼルキンのピアノを
初めて聴きましたが、
素敵なピアニストだと感じます。
このときピーターはまだ
20歳に達していなかったはずです。
新進気鋭のピアニストと指揮者が
しっかりとタッグを組んだ
録音となっています。
ピーターとは相性がよかったらしく、
この後も録音を重ねています。
また、ピーターの父・ルドルフとも
小澤はベートーヴェンの
ピアノ協奏曲全集を録音しています。

CD3のエリック・フリードマンは、
「ハイフェッツの後継者」とも言われた
ヴァイオリニストであり、この時期、
絶頂期にあった演奏家です。
やはりこのときまだ20代であり、
小澤と同世代の若手でした。
小澤という相棒を得て、
フリードマンは実に生き生きとした
演奏を繰り広げています。
彼の数少ない記録の一つを
聴くことができる音盤となっています。

CD4のレナ-ド・ペナリオは、
この頃最もレコードが売れていた、
人気と実力の両方を兼ね備えていた
ピアニストの一人です。
RCAレーベルでの録音は
わずか3年間だけでしたので、
小澤との録音は、
この盤一枚だけとなります。
技巧派であるペナリオのピアノを、
小澤が色彩豊かな演奏で
バックアップしているところが
聴きどころでしょうか。

CD6は、
ジョン・ブラウニングとの一枚です。
こちらもペナリオ同様、
アメリカで最も人気のあった
ピアニストの一人です。
小澤は堂々と
この実力者を支えています。
ジョン・ブラウニングは1992年に
サン=サーンスの「動物の謝肉祭」で、
再び小澤と共演しています
(本BOXに収録されている)。

OZAWA-BOX

それにしても小澤は
伴奏が実にうまいと感じます。
演奏者の個性を生かす方向で
きっちりと合わせているのです。
自分の個性を
音楽に反映させるのではなく、
あくまでもソリストの音楽性を
引き出す方向での指揮に
徹しているのです。
だからといって表現が没個性的で
「可も無く不可も無く」といったものに
なることなく、
音楽の旨味をじっくりと引き出し、
味わい深いものに仕上げているのです。
実力者であるゴンバーグ、ペナリオ、
ブラウニングとも
堂々と渡り合うとともに、
同世代のピーター・ゼルキンや
フリードマンとも
熱い演奏を繰り広げる、
若き日の小澤の魅力を
味わうことができます。

この5枚については、
現在では他の優れた音盤の陰に回り、
半ば忘れ去られたような形に
なってしまっています。
しかしその演奏は、
決して見劣りするようなものではなく、
この時代の優れた演奏の記録として、
依然大きな存在価値を
持ち続けているのです。
買ってよかったと思わせる、
小澤最初期の録音です。
やはり、音盤は愉し、です。

〔これらの盤のソリストの音盤〕

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(2023.10.15)

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