林光「オペラ・森は生きている」を聴く

子どもも大人も愉しめる、至福の音盤

CD棚を整理していて見つけた一組。
20数年前に購入したもので、
所有していたことすら
忘れ去っていました。
シアターこんにゃく座による
林光のオペラ「森は生きている」です。
素敵な時間を過ごすことができました。

林光「オペラ・森は生きている」

林光「オペラ・森は生きている」

林光:
 オペラ「森は生きている」
  〔オーケストラ版〕

オペラシアターこんにゃく座
佐藤敏之(一月・総理大臣)
松川和弘(二月)
花島春枝(三月・女官長・リス)
井村タカオ(四月・オオカミ)
西村まゆみ
 (五月・ウサギ・もう一人の兵士)
井上弓子
 (六月・もう一人のむすめ・リス)
青木美佐子(七月・むすめ)
高野うるお(八月・カラス・警護隊長)
岡原真弓(九月・おっ母さん・オオカミ)
鈴木あかね(十月・女王)
内山靖博(十一月・兵士)
大石哲史(十二月・博士)
Ensemble Forêt
林光(指揮)
録音:2001年

原作はロシアの児童文学作家
マルシャークによる戯曲です。
シンデレラを思わせるいたいけな娘と、
わがまま一杯の女王、
そして森の精たち。
メルヘンチックな童話の世界が
広がっています。

大晦日、わがままな女王が出した
「4月に咲くマツユキ草を
採ってくること」というおふれ。
欲張りな継母と姉娘から、
マツユキ草を採ってくるよう
命じられた娘は、
真っ暗な森で途方に暮れる。
しかしそこで出会ったのは
新年を迎えようとしていた
十二月の精霊たち。
娘に同情した四月の精は、
一時間の「時」を早め、
娘にマツユキ草を与える。
継母たちから
マツユキ草を受け取った女王は、
自ら森へと出掛けるが…。

音楽も素敵です。
「オーケストラ版」とあるのですが、
ブックレットの記載を見ると、
伴奏のメンバーはピアノを含めて
11名であり、室内楽程度の規模であり、
「オペラ」というよりも、
むしろ簡素なミュージカル、
いやもっというと、
NHK-eテレ「お母さんといっしょ」の
拡大版を音で聴いているような
感じでしょうか。
しかしそこから紡ぎ出される
世界の大きさに、心が揺さぶられます。

台詞は当然日本語であり、
筋書きもわかりやすく、
子どものために創られた
作品であるため、
子どもも大人も十分に愉しめます。

しかしそれ以上に特筆すべきは、
この劇団メンバーの歌唱の日本語の
聴き取りやすさだと思います。
日本人が日本語を話すのだから
当たり前と思われるかも知れませんが、
決してそうではありません。
演劇やミュージカル等を観て聴いて
気になるのは、
やはり日本語の発声です。
聴き取りやすい日本語の発声のできる
劇団や歌い手は
決して多くはないのです。
演劇ではやはり
劇団四季が群を抜いているのですが、
このCDから聴き取れる発声は、
それに匹敵する聴き易さを持っています
(日本語とは、
それだけ難しい言語なのでしょう)。

それにしても、CDではなく
映像収録されたBlu-rayもしくは
DVDがないかと探したのですが、
ありません。残念。
これを映像で愉しむことができたら、
さぞかし素晴らしいでしょうに。
YouTubeには、映像(断片)が
いくつかアップされています。
観る限り、とても楽しそうな舞台です。

オペラシアターこんにゃく座

ネットで調べてみると、
今でも演奏されているようですが、
地方に住んでいる身としては、実演を
目にする機会に恵まれるかどうか。
仕方ありません。
この音盤を、大切に何度も聞き返して
愉しむことにしましょう。
やはり、音盤は愉し、です。

〔林光の音盤はいかがですか〕
かなりの数の音盤が出ていて、
しかもまだ流通しています。

(2023.12.10)

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