ブランディーヌ・ランヌーのバッハ

天上から舞い降りてきた音楽のように

古楽器演奏を聴くようになり、
バッハの良さが
少しずつわかってきました。
最近繰り返して聴いているのが
このランヌーの演奏している
バッハのチェンバロ作品集です。
CD5枚組のBOXであり、
「フランス組曲」「イギリス組曲」
「トッカータ集」が収められています。

ブランディーヌ・ランヌー
「フランス組曲」「イギリス組曲」
「トッカータ集」

ブランディーヌ・ランヌー

Disc1-2
J.S.バッハ:
 フランス組曲全曲 BWV.812-817
  第5番ト長調 BWV.816
  第1番ニ短調 BWV.812
  第3番ロ短調 BWV.814
  第4番変ホ長調 BWV.815
  第2番ハ短調 BWV.813
  第6番ホ長調 BWV.817

ブランディーヌ・ランヌー(cemb)
録音:2001年

ランヌーの演奏は、
表情が豊かであることが
特徴の一つとしてあげられます。
どちらかといえば
装飾を多用する傾向にあり、
それがバッハの音楽に
彩りを与えているのです。
装飾によって音楽の基本構造が
曖昧になってしまう演奏家も
見受けられるのですが、
ランヌーの場合は
そのようなことはまったくありません。
バッハの創り上げた音楽の本質を
ゆがめることなく、
むしろそれがはっきり強調される
方向へと向かっているのです。
バッハの音楽を
しっかりと研究した成果なのでしょう。

フランス組曲では、
それがよくわかる演奏となっています。
曲の持つ優雅さ・典雅さが
見事に表現されています。
天上から舞い降りてきた音楽のように
耳に届いてきます。
至福の時間を過ごすことのできる
音盤です。

Disc3-4
J.S.バッハ:
 イギリス組曲全曲 BWV.807-811
  第2番イ短調 BWV.807
  第4番へ長調 BWV.809
  第5番ホ短調 BWV.810
  第3番ト短調 BWV.808
  第1番イ長調 BWV.806
  第6番ニ短調 BWV.811

ブランディーヌ・ランヌー(cemb)
録音:2003年

ランヌーの演奏のもう一つの特徴は、
技巧をことさら見せびらかさないと
いうことでしょうか。
これ見よがしの高速演奏など
まったく見せようとせず、
一音一音をしっかり聴かせてくれます。
それによって
バッハが構築しようとした音の構造が
すっきりと見通すことが
可能となっているのです。

このイギリス組曲は、
先ほどのフランス組曲に比べ、
より高度な演奏技術が求められる
楽曲なのですが、
ランヌーは技巧をひけらかすことなく、
丁寧かつ美しい音づくりを
展開しています。

Disc5
J.S.バッハ:
 トッカータ集 BWV.910-916
  トッカータ 嬰ヘ短調 BWV.910
  トッカータ ト短調 BWV.915
  トッカータ ニ長調 BWV.912
  トッカータ ホ短調 BWV.914
  トッカータ ハ短調 BWV.911
  トッカータ ニ短調 BWV.913
  トッカータ ト長調 BWV.916

ブランディーヌ・ランヌー(cemb)
録音:2005年

さらに、
ここで聴き取れるチェンバロの音色が
美しい限りです。
音が軽くなりすぎず重くなりすぎず、
適度な味わいを持って鳴り響くのです。
グールドの演奏を聴いて
気づかなかったバッハの音楽の機微が、
ランヌーの奏でる音楽からは
十分に聴き取れます。

今日のオススメ!

私はどちらかと言えば、
バッハの音楽と不幸な出会いを
してしまったと感じています。
クラシック音楽を聴き始めた当時、
情報は限られていました
(ネットは存在せず、
「レコード芸術」のみが情報源)。
「バッハはグールドを聴いてさえいれば
よい」的な評論を真に受けて、
主要作品すべてグールドを買いそろえ
聴いていました。
グールドを否定するつもりは
ないのですが、演奏者の
うなり声入りの音盤を聴く度に、
「バッハは変な音楽を書いた人物」という
捉え方しかできず、
バッハの鍵盤楽曲からは
次第に離れていきました。
その後、アンドラーシュ・シフの音盤を
いくつか聴き、そして近年、
シュタイアーやこのランヌーの
チェンバロ演奏を聴くに及んで、
ようやくその呪縛から
逃れることができました。

1685 J.S.Bach

というわけで、バッハの音楽をようやく
楽しめるようになってきました。
やはり、音盤は愉し、です。

〔ランヌーのバッハの音盤について〕
ここで取り上げた5枚組BOXは、
レーベル自体の消滅とともに
廃盤となってしまったのですが、
レーベルを変更して
それぞれ再発売されています。
また、本BOXに収録されていませんが、
「ゴルトベルク変奏曲」も
録音しています。

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